予想通りの西王母の言葉に、ユイナは居住まいを正した。

「それは、サナちゃんに継承の儀に向かってもらう、ってことですよね?」

ユイナが問いかけると、西王母は右の眉をさらに釣り上げた。

「そうなるわね。 先代黄龍が亡くなってから来週でちょうど100日目だし、時期的にはちょうどいいんじゃないの?」

チラッと西王母が視線をサナに移す。

鋭い視線を当てられたサナはビクッとした。

「あ、あの… 私にはまだ…」

サナが恐る恐る口を開くと、西王母は目を細めた。

「いつまでも黄龍の座を空席にしておくワケにはいかないのよ。 それは、あの方のそばにいたあんたが一番良くわかってるんじゃないの?」

ややキツい口調に、サナの瞳にみるみるうちに涙があふれ出す。

「あ、あのっ! 継承の儀って、具体的にはどんなことをするんですか?」

今にも泣き出しそうなサナを庇うように、ユイナは西王母に声をかけた。

「うん、とりあえずはね、サナちゃんに黄龍の鎧を着てもらって、その上であるモンスターを討伐してもらうんだよ。」

答えたのは清源妙道真君だった。

「陛下の鎧を着て、あるモンスターの討伐、ですか?」

首をかしげたサナに、真君は頷いた。

「そうそう。 あ、でもね、黄龍の鎧、って言っても先代のを着るんじゃなくて、ちゃんとサナちゃん用に新調はしてあるからね?」

「新しい黄龍用の鎧を着て、サナには金火竜のソロ討伐に行ってもらうわ。」

「「「「金火竜のソロ討伐っ…!?」」」」

西王母の言葉に、それまで黙ってなりゆきを見守っていた四神たちから驚きの声が上がった。

「恐れながら西王母さま。 サナにはまだ、金火竜のソロ討伐は無理かと…」

「そうです! せめて、青龍か私を同行させてください!」

青龍と朱雀が必死に訴えるが…

それまで優男的な雰囲気だった清源妙道真君の口調が、ガラリと変わった。

「それじゃあ、意味ないんだよねぇ。 黄龍は仙界を引っ張っていく重要な存在なんだ。 金火竜をソロ討伐できないような黄龍なら、我々は必要ないんだよ。」

思いのほか厳しい口調の真君の言葉に、青龍と朱雀は色を無くした。

さすがに今の真君の言葉はキツいと思ったのか、西王母は意外な言葉を言った。

「大丈夫よ。 先代がサナをそれなりに鍛えてるハズだから。 あの方に手解きを受けたのなら、倒せないハズがない。」