炎華は、今まで自分が立っていた場所に金色のオーラを纏う女性が立っていたので驚いた。

「アンタ、誰だ?」

するりと背中から剣を抜き、炎華も油断なく身構える。

金色の女性はフッと笑うと、再び剣の切っ先を炎華へ向けた。

「そなたのオーラは強すぎる。 この世のバランスを崩しかねぬほどにな。」

「で?」

「それゆえ、その首に鈴をつけに参った。」

「そうじゃ。 かの孫悟空もつけられておったであろう?」

「なにを…!?」

炎華は、遥か東の彼方に存在する大陸の昔話を思い出した。

「てめぇ… やれるもんならやってみろ!!」

炎華の全身から、朱金のオーラが吹き出した。

「ふむ。 やはり間近で見ると、放っておくわけにはいかぬの」

「お頭っ…!?」

さすが海賊、いつの間にか金色の女性のまわりを屈強な男たちが取り囲んでいた。

が、女性は怯えたり慌てたりする様子は見せない。

「そういえば、戦の途中であったな」

言うが早いか、女性はパチンと指を鳴らした。

すると…

それまで炎華たちと戦っていた敵の海賊たちの姿が一瞬で消えた。

「なっ…!?」

配下の男たちは驚いてキョロキョロしていたが…

炎華は怒りに目をつり上げた。

「このやろう… 戦いの邪魔をしやがって…!」

「憂いなく妾との戦いに専念しやすい環境を作ったまでじゃ。 感謝こそされど、非難される言われはないぞ」

「後悔するなよ? アタシだって、だてに荒くれ野郎どもの頭はってるワケじゃねーんだ!」

鋭い目で金色の女性を睨みつけると、炎華は剣を構えた。

「はあっ!」

ものすごい速さで金色の女性に踏み込んでいく。

が、女性は表情ひとつ変えずに炎華の剣を受け止めた。


「す、すげぇ…」

「あのお姫さん、お頭と対等にやりあってんぜ。」

配下の男たちが、感嘆の眼差しで2人の女性の戦いを眺めていた。

実力が拮抗しているのか、なかなか勝負がつかない。

が、ようく見ると、炎華の額にうっすらと汗が浮かんでいるが、金色の女性は汗ひとつかいていない。

炎華の突きをヒラリとかわしては、すぐさま隙なく剣を構える。

金色の髪がフワリと風になびくさまが、実に美しい。

「くっ! まさか、こんな華奢なお姫さんにこんなに体力があるなんて!」

炎華は、歯を食いしばりながら、それでも攻撃の手を緩めなかった。