「だ、そうじゃ。 どうする? ユイナ?」

雪光が驚いて女性の後ろを見ると…

青ざめた顔をした白い鎧の女性が出てきた。

「ユイナさん…?」

「しろ…」

声をかけようとして迷った女性に、雪光は優しく笑った。

「白輝でいいですよ? 全部思い出しましたから。」

「白輝…」

雪光はユイナにゆっくり近寄ると、そうっと抱きしめた。

「………っ!?」

離れようとしてもがくユイナに、雪光はそっと囁く。

「ユイナさん、ありがとう。」

驚いて硬直するユイナに、雪光は更に囁く。

「助けてくれて、ありがとう。 育ててくれて、ありがとう。 あと、泣かせてしまってごめんなさい。」

「そんなこと…」

「ずっと、ずっと伝えたかったんだよ?」

「白輝…」

迷っていたユイナの腕が、そっと雪光の背中に回される。

「せっかく人間として会えたのに、忘れてしまっててごめんなさい。」

「そんな…」

ユイナの瞳から涙が溢れだす。

「待っててくれて、ありがとう。 今度こそ、ずっと一緒にいよう?」

「白輝…」

だが、甘い空気が流れ始めた2人に冷水を浴びせるような言葉がかけられた。

「それは無理じゃな。」

「陛下っ…!」

遮ろうとする青龍を手のひとふりで黙らせて、黄龍は雪光に厳しい眼差しを向けた。

「言ったであろう? おぬしとユイナには、違う時間が流れている、と… 一度仙界に足を踏み入れてしまったユイナは、もう二度と人間には戻れない。」

「でも、ユイナさんは天翔宮に行けたんですよね? それなら…」

「それは、ユイナがおなごだったからじゃ。 おぬしは男ではないか…」

「そ、それは…」

固まってしまった雪光に呆れたような視線を向けた後、黄龍はユイナに視線を向けた。

「ユイナ、ここまで待ったのじゃ、もう少し待てるか?」

「はい?」

「さすがに天翔宮に白輝を迎えることはできぬがの。 ユイナが待てるなら、白輝が人間としての天命を終えた時、従兄どのの宮に仙人として迎えてくれるよう、話を通すことはできるぞ?」

ユイナは目を輝かせて黄龍を見た。

「待ちます! いくらでも!」

ユイナの言葉を聞いた黄龍は、今度は雪光に向き直った。

「そなたは?」

「俺も待ちます! いずれ、ユイナさんと一緒にいられるなら!」

2人の言葉を聞いた黄龍は、満足げに微笑んだ。