雪光は必死に走った。

ユイナに想いを伝える為に…

助けてくれたお礼…

育ててくれたお礼…

泣かせてしまったお詫び…

また出会えたのに、忘れてしまっていたお詫び…

今まで、伝えたくても言葉が話せなくてもどかしかった。

種族が違うことが、とても悲しかった。

だから、神さまが「次はどんな生を送りたいか」聞いてきた時、迷わずに「人間」を選んだのに…!


はあっ! はあっ!


渓流のエリア5にさしかかった時、あたり一面がふいに金色の光に満たされた。

「お前はなぜ、そんなに急いでいる? どこへ行くつもりじゃ?」

いつの間にか、雪光の前にひとりの女性が立っていた。

金色の光を纏ったその女性は、厳しい眼差しを雪光に向けていた。

「俺は… ユイナさんにいろいろなことを伝えたいっ!」

「ユイナが人間じゃないとしても?」

「………………!?」

女性の言葉に、雪光は驚いた。

「人間じゃないって、どういうことですかっ…?」

「そなたの転生を待つ為に、ユイナは我が宮、天翔宮へ来た。 我が宮に来るということは、人間としてではなく、仙人として生きる、ということ。 ユイナには、すでにそなたとは異なる時間が流れておる。」

「それは… 俺は年を取っても、ユイナさんは変わらない、ってことですか?」

「簡単に言うならそういうことになる。 まぁ、それ以外にもいろいろあるがの。」

「それなら…」

「それなら…?」

雪光は、一度ゆっくり深呼吸をすると、意を決して女性に向き直った。

「それなら、俺もあなたの宮へ連れて行ってください!」

雪光の言葉に、女性は軽く目を見張った。

「人間であることを捨てるのか? せっかく、ハンターになれたのに?」

「俺は… 何度も夢に出てきた、声も立てずに静かに泣いているユイナさんを守りたいからハンターになろうと思ったんです。 いつかきっと、出会えるのかもしれないと思って…」

「ふむ?」

「いつか出会えたら、泣かさない為に強くなりたい!、って…」

すると、女性は不敵な笑みを浮かべた。

「なら、そなたは人間であることを捨て、己の家族や友人も捨て、ユイナのそばにいることを選ぶ、そう申すのじゃな?」

雪光は強く頷いた。

「はい!」

「だ、そうじゃ。 どうする? ユイナ?」