季節は巡り
森は染められ
風は奏でて
想い溢れて…


Janne Da Arc 「月光花」より


硬直してしまった雪光に、女性は厳しい眼差しを向けた。

「フィールドに出て迷っていたら、その一瞬の隙をモンスターは突いて攻撃してくる。 パーティなら仲間がフォローしてくれるけど、ソロじゃそうはいかない。」

「キミは、パーティでしか狩りのできない“ゆとりハンター”になるつもりなの?」

女性の言葉に、雪光は顔を上げた。

「俺は“ゆとりハンター”になるつもりなんてないっ…!」

雪光の叫びを聞いた女性は視線を和らげた。

「なら、ウルクススの立ち回りを教えてあげる。 同じように動けたら、必ず5分は切れるから。」

そうして、丁寧に立ち回りを教えてくれた。

「そろそろ行かなきゃ。 キミも、もう帰りなさい。」

「また会えますか?」

言ってしまってから、雪光は顔を赤くした。

そんな雪光を見て、女性は一瞬、切なそうな目をした。

「そうね。 縁があれば、また会えるかもしれない。」

「あの、良ければなま…」

ふいに、女性の指が雪光の唇を押さえた。

「覚えておきなさい。 名前は、時に自身を縛る鎖にもなる。 誰彼構わず、教えてはいけない。」

言い終わると同時に、女性の姿は消えてしまった。

後には、呆然とした雪光が残された。





「ユイナは、どうするつもりなのでしょうか?」

青龍の問いかけに、黄龍は痛ましげな光を浮かべた。

「ユイナはおそらく何も告げず、あのままだろうよ。」

「そんなっ…!? やっと会えたのに…!?」

「ユイナはな、気付いてしまったのじゃ。 仮に生まれ変わった白輝と再び出会えたとしても、やはり、2人の道が交錯することはない、とな。」

驚く青龍に、黄龍は続けた。

「皮肉なことじゃ。 再び巡り会わせたい、と思ってしたことが、2人の道を違えてしまった。」

「それは… ユイナは仙界の住人で、白輝は人間だから、ということですか…?」

「そうじゃ。 今のままでは、間違いなく白輝は先に年老いて死ぬ。 じゃが、ユイナは年を取らぬ。」

「何か… 方法はないのですか…?」

黄龍は難しい顔をした。

「さすがに妾にも、それはわからぬ。 何とかしてやりたい、とは思うがの…」