本日発売の日経新聞に
師匠のインタビューが掲載されました。

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語る「芸は基本通りに貫く」 杵屋勝国

いま最も脂の乗り切った三味線の名手である。その演奏は華麗でリズミカルで力強い。
「うち(杵勝会)の特徴は豪快さ。歌舞伎座みたいな大きな舞台ではバリバリ弾かないと隅まで届かない。とにかく歯切れのいい音を心掛けている」
六歳の六月六日に祖母に家(福岡県柳川市)の近所のけいこ屋に連れて行かれたのがこの道の始まり。以来、六十三歳の今日まで「辞めたいと思ったことはない。好きなんですね」と笑う。七歳で九州随一といわれた杵屋寿太郎に師事、十歳で初舞台を踏んだ。
「プロへと思ったのは中学生のころ。九州にけいこに来られた家元(七代目杵屋勝三郎)から『東京へ来なさい』と言われた」。才能を見込んだ勝三郎が自ら仕込みたいと思ったのだろう。十六歳で単身上京。転校した玉川学園では歌舞伎研究会へ入り毎月、歌舞伎座に通った。「すでに五、六十曲は覚えていたが、歌舞伎の三味線の派手さに驚かされた」
東京芸大邦楽科を卒業後は、杵勝会を中心にした長唄演奏会をはじめ、歌舞伎公演にも出演。坂東玉三郎や中村勘三郎の長唄舞踊の立三味線を勤める。「玉三郎さんとは三十年来のお付き合いになるが、『踊りに合わせるのではなく、普通に弾いて』とおっしゃる。いい演奏であれば、それに乗って踊るからということなんです。二十五日間で良かったと思えるのは一日か二日。芸は生き物、難しいもんです」
八月二十日、東京・国立劇場で「長唄 杵屋勝三郎 杵屋勝国」と題した、芸の継承を伝える演奏会が開かれる。「家元の教えは『世の中の常識を知り、芸は基本通りにやれ』。それが分かってきたのは五十を過ぎてから。それを若い弟子たちにも伝えていきたい」
(日本経済新聞 2008年7月27日版)


2008-07-27 14:37:59