1902年フランス・ジョルジュ・メリエス監督「月世界旅行(Le Voyage Dans La Lume)」
(議場に集まっている人々)人類の叡智を集め、科学技術の粋を極めた月世界への旅。その実現に向けた世界天文会議が今まさに開かれようとしておりました。議会場に参集する各国の天文学者たち。
(望遠鏡を抱えてやってくる人々)
最後にバルバンヒューイ会長が登壇、いよいよ月世界旅行計画が発表されるのであります。バルバンヒューイ会長、演じるはジョルジュ・メリエス。
会長「本日はお忙しいなかお集まりいただきまことにありがとうございます。さて、わたくしがこれからご説明申し上げますのは、あの夜空に皓々と輝く天体・月への科学的探索・研究を目的とした大旅行の計画であります。ワタクシが開発した砲弾型の乗り物を使い、このように長い砲台から月に向けて発射する、というものでありましてーー」
しかし、ひとりの学者の激しい反論に、バルバンヒューイ会長にわかにヒートアップ、やがて実弾飛び交う大変な事態となりました。何とか収拾したものの、怒りが収まらない会長。
会長「まったく、なんという失礼な愚か者であるか!(壇上から降りる)諸君、吾輩はたったひとりでも月へ行きますぞ!さあ我こそはという者はおりませんか!ほら、さあ!どうですか!」
(去りかけて、引き止められる。新しい服が運ばれる)こうして決まったのは、会長を含めて6人の科学者たち。(着替える)早速一行は、お揃いの燕尾服に身を包み、急ピッチで製造中の砲弾型宇宙船の製造工場に見学に行くことになりました。
(工場)国中の技術者を結集し、昼夜の別なく作業は進められておりました。興味津々、あちらこちらと見て回る博士たち一行。
博士たち「なるほどなるほど」
(バケツにお尻を突っ込むひとりの博士)
現場監督「先生方、屋上から発射台を作っているところがよく見えますぜ」
博士たち「そうかそれは見なければ」
6人は現場監督の案内で屋上へ。
はるか遠くにニョキニョキと立ち並ぶ煙突からは、もうもうと白い煙が吐き出されています。熱く溶けた鉄が鋳型に流し込まれると、ひときわ大きな白煙があたり一面を覆うのでありました。
そしてついに出発の日。観衆の拍手と大歓声にこたえる博士たち。緊張と興奮のなか、彼らは出来上がったばかりの砲弾型宇宙船に次々と乗り込んで行きます。(宇宙船のハッチが占められる)発射準備完了。(宇宙船が発射台の中へ)(女性たちが後ろから押している)(旗とラッパを持った女性たちが整列)ファンファーレが高らかに鳴り響き、合図が出されます。導火線に点火、轟音とともに宇宙船は飛び出しました。観衆の興奮は最高潮に達しました。
何にも知らない月は、悠然と輝いております。しかし確実に、宇宙船は近づいて行く。(月面に突き刺さる宇宙船)かくて博士たちを乗せた宇宙船は、みごと月面に到着しました。
会長「(ハッチを開けて)やったぞ、ついに月にやってきたぞ!」
博士たち「素晴らしい!(手を上げて喜ぶ)」
やがて地平線の向こうから地球が顔を出しました。
博士たち「素晴らしい!」
博士たち「私はカモメ」
博士たち「地球は青かった!」
会長「さあ調べることは山ほどありますぞ」
とーー(大爆発)
会長「わわ、何だ何だ!」
博士たち「会長、急ぐことはありません。みんな長旅で疲れている。少し休みましょう」
さすがの会長もこの提案を受け入れ、めいめいに寝具が配られました。すぐに眠りはじめる博士たち。夜空には星が流れーー天の柄杓こと北斗七星ーーそして星を司る神々が、眠る一行を見下ろしています。やがて、雪が降って来ました。あまりの寒さに目を覚ます博士たち。
博士たち「こりゃたまらん、このままだと凍え死んでしまうぞ」
慌てた一行は、宇宙船が激突して出来た大きな穴のなかへ避難。
そこは、見たこともないような植物が生い茂る、不思議な世界でありました。会長のコウモリ傘は突然キノコのようにニョキニョキ伸び始めました。そこへ現れた不気味なバケモノ。
会長「なんだなんだ、ええい!このバケモノめ!」
煙と共に消えたバケモノ。しかしすぐまた次のバケモノが。ぞくぞくと襲いくるバケモノたちーー彼らは月の地下に住む月世界人でありました。
囚われてしまった博士たち。連れてこられたのは月の王宮。一行は国王の前に引き出されたのであります。しかし一瞬の隙をついて会長がイマシメをとき、王に襲いかかります。
会長「この人形め!」
王、大爆発、王宮、大混乱。それに乗じて一行は脱出、追ってくる月世界人たちに対して、バルバンヒューイ会長八面六臂、獅子奮迅の大活躍。
ようやく宇宙船に辿り着いた一行ですが、なおも迫り来る月世界人。最後まで外で戦う会長。しかし、どうやって地球へ?
会長「よし、これだ!」
宇宙船の先についたロープからぶら下がり、会長自身の重みで地球に戻ろうとする作戦。狙い通り月から落ちて一直線ーー!
みごと地球の大海原に着水した宇宙船ーー偶然通りかかった蒸気船に曳航され、一行は無事母国に帰り着いたのでありました。博士たちの奇跡の帰還をことほぐ人々。(博士たちに戴冠)あまりに賑やかな人々の騒ぎように、ただひとり地球までついて来た月世界人も思わず踊り出す始末。ジョルジュ・メリエス監督「月世界旅行」映画一巻の終わり。
(議場に集まっている人々)人類の叡智を集め、科学技術の粋を極めた月世界への旅。その実現に向けた世界天文会議が今まさに開かれようとしておりました。議会場に参集する各国の天文学者たち。
(望遠鏡を抱えてやってくる人々)
最後にバルバンヒューイ会長が登壇、いよいよ月世界旅行計画が発表されるのであります。バルバンヒューイ会長、演じるはジョルジュ・メリエス。
会長「本日はお忙しいなかお集まりいただきまことにありがとうございます。さて、わたくしがこれからご説明申し上げますのは、あの夜空に皓々と輝く天体・月への科学的探索・研究を目的とした大旅行の計画であります。ワタクシが開発した砲弾型の乗り物を使い、このように長い砲台から月に向けて発射する、というものでありましてーー」
しかし、ひとりの学者の激しい反論に、バルバンヒューイ会長にわかにヒートアップ、やがて実弾飛び交う大変な事態となりました。何とか収拾したものの、怒りが収まらない会長。
会長「まったく、なんという失礼な愚か者であるか!(壇上から降りる)諸君、吾輩はたったひとりでも月へ行きますぞ!さあ我こそはという者はおりませんか!ほら、さあ!どうですか!」
(去りかけて、引き止められる。新しい服が運ばれる)こうして決まったのは、会長を含めて6人の科学者たち。(着替える)早速一行は、お揃いの燕尾服に身を包み、急ピッチで製造中の砲弾型宇宙船の製造工場に見学に行くことになりました。
(工場)国中の技術者を結集し、昼夜の別なく作業は進められておりました。興味津々、あちらこちらと見て回る博士たち一行。
博士たち「なるほどなるほど」
(バケツにお尻を突っ込むひとりの博士)
現場監督「先生方、屋上から発射台を作っているところがよく見えますぜ」
博士たち「そうかそれは見なければ」
6人は現場監督の案内で屋上へ。
はるか遠くにニョキニョキと立ち並ぶ煙突からは、もうもうと白い煙が吐き出されています。熱く溶けた鉄が鋳型に流し込まれると、ひときわ大きな白煙があたり一面を覆うのでありました。
そしてついに出発の日。観衆の拍手と大歓声にこたえる博士たち。緊張と興奮のなか、彼らは出来上がったばかりの砲弾型宇宙船に次々と乗り込んで行きます。(宇宙船のハッチが占められる)発射準備完了。(宇宙船が発射台の中へ)(女性たちが後ろから押している)(旗とラッパを持った女性たちが整列)ファンファーレが高らかに鳴り響き、合図が出されます。導火線に点火、轟音とともに宇宙船は飛び出しました。観衆の興奮は最高潮に達しました。
何にも知らない月は、悠然と輝いております。しかし確実に、宇宙船は近づいて行く。(月面に突き刺さる宇宙船)かくて博士たちを乗せた宇宙船は、みごと月面に到着しました。
会長「(ハッチを開けて)やったぞ、ついに月にやってきたぞ!」
博士たち「素晴らしい!(手を上げて喜ぶ)」
やがて地平線の向こうから地球が顔を出しました。
博士たち「素晴らしい!」
博士たち「私はカモメ」
博士たち「地球は青かった!」
会長「さあ調べることは山ほどありますぞ」
とーー(大爆発)
会長「わわ、何だ何だ!」
博士たち「会長、急ぐことはありません。みんな長旅で疲れている。少し休みましょう」
さすがの会長もこの提案を受け入れ、めいめいに寝具が配られました。すぐに眠りはじめる博士たち。夜空には星が流れーー天の柄杓こと北斗七星ーーそして星を司る神々が、眠る一行を見下ろしています。やがて、雪が降って来ました。あまりの寒さに目を覚ます博士たち。
博士たち「こりゃたまらん、このままだと凍え死んでしまうぞ」
慌てた一行は、宇宙船が激突して出来た大きな穴のなかへ避難。
そこは、見たこともないような植物が生い茂る、不思議な世界でありました。会長のコウモリ傘は突然キノコのようにニョキニョキ伸び始めました。そこへ現れた不気味なバケモノ。
会長「なんだなんだ、ええい!このバケモノめ!」
煙と共に消えたバケモノ。しかしすぐまた次のバケモノが。ぞくぞくと襲いくるバケモノたちーー彼らは月の地下に住む月世界人でありました。
囚われてしまった博士たち。連れてこられたのは月の王宮。一行は国王の前に引き出されたのであります。しかし一瞬の隙をついて会長がイマシメをとき、王に襲いかかります。
会長「この人形め!」
王、大爆発、王宮、大混乱。それに乗じて一行は脱出、追ってくる月世界人たちに対して、バルバンヒューイ会長八面六臂、獅子奮迅の大活躍。
ようやく宇宙船に辿り着いた一行ですが、なおも迫り来る月世界人。最後まで外で戦う会長。しかし、どうやって地球へ?
会長「よし、これだ!」
宇宙船の先についたロープからぶら下がり、会長自身の重みで地球に戻ろうとする作戦。狙い通り月から落ちて一直線ーー!
みごと地球の大海原に着水した宇宙船ーー偶然通りかかった蒸気船に曳航され、一行は無事母国に帰り着いたのでありました。博士たちの奇跡の帰還をことほぐ人々。(博士たちに戴冠)あまりに賑やかな人々の騒ぎように、ただひとり地球までついて来た月世界人も思わず踊り出す始末。ジョルジュ・メリエス監督「月世界旅行」映画一巻の終わり。
