島の婿入り
A Sea Dog’s Tale

監督 デル・ロード

これは、とある老船乗りが語ったお話ーー
T It was broiling hot in Salami — a link of the Sausage Island.
Tソーセージ諸島のひとつ、サラミ島は今日も茹だるような暑さでした。
(サラミ島の砂浜。人々が集まっている)(画面左に立つ島民が先の尖った竹を右に立つ島民目掛けて投げる)
T King Gumbo had the largest collection of shin bones and Adam’s Apples South of the Equator. — Andy Clyde
T島の王様ガンボには、すねの骨とのどぼとけの、赤道より南では最大のコレクションがありました。演じるはアンディ・クライド
(島民、次々竹槍を投げる)
T Jo Jo — owns a cheerful disposition and the only pair of pants in the Kingdom. — Vernon Dent
Tジョジョは陽気な男で、島で一番の伊達男。演じるはバーノン・デント

ジョジョ「よーし(後ろ向きに反って、投げる)どうだ!」

(槍は見事に標的の間近に)

T”You win the Royal Bamboo.”
T王様「バンブー大会の優勝はお前だ。このバンブーの冠をやろう」

(物憂げに扇で仰ぐ女性)
T Princess Vanilla, the King’s daughter — a black-eyed Susan of the South Seas. — Madeline Hurlock
Tバニラは王の娘。ーー黒い瞳の南洋の美女の呼び声高き王女でした。演じるは、マデリーン・ハーロック。

ジョジョ「いつ見てもバニラ王女はお美しい。
T”I offer six bunches of Bananas my derby hat for your daughter’s hand!”
Tバナナを六房とダービーハットを王女様にぜひ!」

これはお決まりの求婚のセリフ。

T”Never — she’s got an offer from Fiji Follies!”
王様「なんだと?Tふざけるな!もうフィジーのやつらから求婚されておるのだ!」
ジョジョ「そこを何とか(お辞儀)」

(その尻に山羊が突っ込む)

ジョジョ「痛っ!」
王様「(火にかけた鍋に尻餅)あちちちちっ!」

(島民慌てて王様の尻に砂をかける)

ジョジョ「すみません!山羊のやつがーー」
王様「うるさい!おい!(呼ぶ)
T”Shoot him! — anywhere between the beach and the jungle! —“
Tおい、こいつを撃て!砂浜でもジャングルでもどこでもいい!今すぐ!」
ジョジョ「そ、そんなーー(連れて行かれる)」

さて、一方ーー(砂浜に打ち上げられたものを拾い上げている島民)

島民「(瓶のようなものを手にとって)こりゃなんだ?中身がまだ残っているかな?(中に紙を丸めたものが)ん?(広げてみる)」
王女「ちょっと見せなさい!」

(写真)Wilbur Watts
Champion Hot Cake Eater of the Backwheat Belt
それは新聞記事ーーホットケーキ大食いチャンピオンウィルバー・ワッツを取り上げた記事でした。
山高帽に立派な鼻髭ーー王女はひとめで心とらわれてしまいました。(切り抜きにキスをする)(国王の元へ)

王女「お父様!」
国王「なんだ?」
T”Here’s the only man I’ll ever marry!”
T王女「(記事を見せながら)この人こそ私の夫です!」
国王「なに?ーーうむ、そうか。おい、そいつの処刑は中止だ!」

(ジョジョ、国王の前に)

国王「うむ。お前を許してやろう(切り抜きを見せて)
T”Find this follow and I’ll pardon you.”
Tこの男を見つけ出しここへ連れてくれば命は助けてやろう」

(暗転)
T While five thousand miles away — as Old Crow flies —
T500マイルも離れているにもかかわらずーージョジョはすぐさま一直線に向かいました。
(結婚式)
T— Wilbur, the Champion Eater was paying his board bill by marrying his landlady. Billy Bevan
T大食いチャンピオンのウィルバーは、大家と結婚することで食費を賄っていました。演じるはビリー・ビーバン。
T Lemona Smith, the Waffle Wizard of Wisconsin. Patsy O’Bryne
Tレモナ・スミスーーウィスコンシン州のワッフルの天才。演じるはパッツィー・オブライエン。

レモナ「安心して。私が食べさせてあげるわ!」

(後ろの幕から顔を出すジョジョ)(ウィルバーの頭を棍棒で殴る)

神父「ああ、なんてことだ!」
観客たち「花婿が攫われた!」
T”I’ll follow him to the ends of the earth.”
花嫁「私の愛しい人!T地の果てまで追いかけて彼を取り返すわ!」

Six days later — starving like sparrows at the Scotch picnic.
T6日後ーー飲まず食わずでスズメのように腹を空かせて島に到着。
(小舟で陸に上がる)

島民「こいつが王女様とーーチクショウ!」
ウィルバー「(逃げるが、椰子の木に激突)痛っ!(椰子の実が落ちてくる)」

(猿が落としている)

ジョジョ「こちらが王様のお犬様だ」
ウィルバー「ああ、これはーー」
ジョジョ「おお、王様っ!」
国王「うむ」
ジョジョ「連れてまいりました」
国王「下がっておれ」
ウィルバー「いや、どうも王様ーーこの度はどうもーーあのぅ、その、ですね」
T”Don’t worry, I brought you here to marry one of my daughters.”
T国王「安心するがよい、その方を連れてきたのは、我が娘が見そめたゆえじゃ」
ウィルバー「いえ、それなんですがーー」
国王「(長女が出てくる)チョコじゃ」
ウィルバー「なるほど」
国王「(次女が出てくる)ココアじゃ」
ウィルバー「よく似ている」
国王「(三女が出てくる)シュガーじゃ。(四女が出てくる)バター」
ウィルバー「このっ!(四女を蹴ろうとして)
T”Who are the fat Mammas, King?”
王様、今の方々は?」
T”My daughters!”
T国王「わしの娘たちじゃ!」
ウィルバー「ええ?あれがあなたさまの娘?で、私と?そんな!」

At the banquet — the sipping of the soup was heard miles of the sea.
T歓迎の宴では、あまりに盛大なためにスープをすする音が海を越えて響き渡ったといいます。(テーブルの前では島の娘たちが踊りを披露)(ロープの先につけた肉を交互に齧る島民たち)そしてバニラ王女がとびっきりのオシャレをして出てきました。

国王「おお、皆の者、バニラがやってまいったぞ(島民も立ち上がる)」

王女の胸は熱い想いではち切れんばかり。

ウィルバー「なんと美しい!
T”Say King — who’s the light panatella?”
T王様、あのお美しい方は、どなたですか?」
T”She’s my daughter — your future wife!”
T国王「あれこそその方を見そめたーーわしの娘じゃ」
ウィルバー「ええ、あの王女様が?」

かくしてバニラ王女も加わり、ますます華やかに、賑やかになる宴。

給仕「失礼します。スープでございます(腰にさげた鍋からスポンジを取り出し)」
ウィルバー「(皿を覗き込んで)いや、これは結構。さげてくれるかい?」
給仕「承知しました(スポンジを皿に入れて、隣の皿へ)どうぞ」
島民「ありがとう」
ウィルバー「え、平気なの?」

(島の娘たちの踊り)

給仕「(パスタみたいなものを皿に)どうぞ」
ウィルバー「ええと、これはどうやって……」

ウィルバー隣を見るとーー右手の指で器用に巻き取ってーーグルグル回してポイ!

ウィルバー「すごい……本当にああやるの?」

別の島民も同じようにーーグルグル巻き取ってーーポイ!

ウィルバー「よーし、やってみよう(麺を摑んでグルグル)あっ、しまった!」
国王「うわっぷ!このワシに何ということをするのじゃ!無礼者め!」
T”Make him fight for the Princess — by trimming the Sacred Shark’s whiskers.”
Tジョジョ「王様、王女様のために、聖なるサメのヒゲを剃る儀式が必要です!」
国王「よし、それはいい!」

(立ち上がる人々)(暗転)
早速特製の筏に乗って海へ。

T”Ten thousand sharks are bellow — the one I want has soft blue eyes.”
T国王「このあたりには十万匹のサメがおる。じゃが、儀式に必要なのはたった一匹、落ち着いた青い目を持ったやつじゃ。見事そのサメのヒゲを持ってきた者に王女をやろう」

(海面にサメの影)

ウィルバー「なんだかウヨウヨしてますねえ。お互い頑張りましょう(ジョジョと握手)あのぅ
T”You go first — I’m a stranger here.”
お先にどうぞ。僕は新参者なんで、どうも勝手がーー」
ジョジョ「そうだなあ、いきなりは大変だ。でもよく見てみろ、綺麗な海だろう(棍棒で頭を殴る)(ウィルバーを前屈みさせて)ほれ!(尻を蹴る)」

一瞬気を失ったウィルバーは海の底へー

ジョジョ「国王様、王女様!大変です!」

さて、海底のウィルバーはいたって呑気なものでーー(宝箱を開けてみたり)(中から骸骨が!)

ウィルバー「うわあ!」
ジョジョ「奴は本物の勇者です。(海面を見て)あっ!ごらんください!ああ、なんということだ!」

さて、そんなこととはつゆ知らず……

ウィルバー「それにしても暗いな……(マッチを擦ってあたりをうかがう)ちょっ……見えないや(マッチを投げ捨てる)」

海の中というのは意外と燃えやすい!

T”Fire! Fire!”
Tウィルバー「わわっ!火事だー!火事だーっ!」

海の上の筏も煙に包まれて行くーー

ジョジョ「誰か助けてくれーっ!」

(消火活動をするウィルバー)

ジョジョ「誰かーっ!」

消火をあきらめたウィルバーが拾ったのは、缶詰。

ウィルバー「まともなもの食べてなかったからちょうどいいやーーどれどれ……な、なんだなんだ!生きてるじゃないか!(空の缶詰を捨てる)」

そのウィルバーに忍び寄る影ーー

ウィルバー「わわっ!(尻もち)いたたたた、なんだ?あーーヒトデか」

とにかくサメ対策を考えなければなりません。(ヒトデを胸につけて)

ウィルバー「ああ、コホン!(サメが横切る)こら!私は交通整理の警察官であるぞ!さ、とまってとまって!(手を広げる)とおってよし!」
人魚「おまわりさん!」
ウィルバー「ちょっとストップ!はいはい、何かね?」

(人魚をエスコートするウィルバー)

人魚「おまわりさん、その胸のバッジ素敵だわ」」
ウィルバー「そうかい。それはありがとう」
人魚「それにそのおヒゲも……!」

ちょうどそのころーー上空では(複葉機がやってくる)。

レモナ「必ずあの人を見つけるわ!」

(デレデレしているウィルバー)

ウィルバー「いてて!」

(碇でウィルバーを引き上げる)

ウィルバー「うわっ!な、な、なんだ!」
レモナ「あなた!(引っ張り上げる)」
T”Nothing can ever part of us now!”
Tレモナ「誰にも私たちの邪魔はさせないわ!」
T”Don’t kid yourself!”
Tウィルバー「冗談じゃない!(飛び込む)」
レモナ「あなた!」

なぜかモテモテの大食いウィルバー、レモナもバニラ王女も捨てて結局人魚と結ばれたのであります。「島の婿入り」映画一巻の終わり。