本屋さん探訪記vol.2 千駄木:往来堂書店 | B&Fab「本」と「ものづくり」と「珈琲」

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本(Book)とモノづくり(Fabrication)を中心に、人が集まり会話が生まれる憩いの場、そんな場所を作りたく、ただいま奮闘中!(または迷走中)

前回からスタートしました本屋さん探訪記。

第2回の今回は、知る人ぞ知る街の本屋さんの代表格!
千駄木の「往来堂書店」さんです。
http://www.ohraido.com/

誕生エピソード
ホームページにも書かれていますが、
1996年、まさに出版業界の下降線が始まるときに、往来堂書店は誕生しました。

書店の大型店化・チェーン店化の勢いが増す中で、街の本屋さんが廃業している状況を憂い、
「まちの本屋の復権」を思いに作られたとのことです。

そして往来堂書店さんが、創業以来20年近くやり続けていることは、
「棚は管理ではなく、編集するもの」
売れ筋の雑誌への依存をなくし、売れる本で勝負する。
そして「取次からの一方的な配本」を抑え、売れる本を自分で探して売る。

言葉にすると簡単なことのようですが、日々出版される膨大な書籍の数を考えると、
並大抵の努力ではできないことだと思います。

店長の笈入 建志(おいり けんじ)さんの
「店に来てくれるお客さんとの関係の中にしか、売れる本のアイデアはない」
という言葉には、本当に良い本屋を作りたいという、強い思いが表れています。

店内の様子
場所は地下鉄千代田線千駄木駅から、不忍通りを根津方面に300Mほど行ったところ、
徒歩5分ほどの距離です。青い日除けが目印です。
見た目は、全く昔ながらの街の本屋さん。
通りに面していて、気軽に入れる感じがします。

往来堂書店さんの特徴は、何と言ってもコレ、伝説の「文脈棚」です。
「本はその両隣にある本とのつながりのなかで、お客さまに届くものである」
という言葉の通り、一冊一冊の本の配置にとことんこだわりを持っています。
隣にある本との何かしらの関係性を文脈と呼び、すべての書棚がその文脈で成り立っています。

よくある書店では、店に入ると大概は、売れ筋の雑誌やベストセラー本が並べられていますが、
往来堂書店さんでは、いきなり文脈を投げかけられます。
何か自分自身の本に対するこだわりを、試されているような気にもなります。

だからと言って、敷居の高いということではなく、雰囲気はとても明るい本屋さんです。
店長や店員さんの接客も、非常に軽妙でフレンドリーです。

店の広さは20坪ほどですから、あまり広くはありません。
しかし、文脈棚にはまってしまうと、軽く2時間ぐらいたってしまいます。
そして、どれもこれも欲しくなってしまいますので、
ついつい買い過ぎてしまうかもしれません。

おそらく、他の書店でも置いてある本も多いのでしょうが、
往来堂書店さんで見つけた本は、特別な本と出会ったかのように、
その本から伝わってくる何か、語りかけてくる何かを感じます。
すごく不思議なのですが、これが文脈棚の持つ力なのでしょうか。

この本屋さんで出会った本
地下鉄で「昭和」の街をゆく 大人の東京散歩 (河出文庫)/河出書房新社
入り口右手の文脈棚で発見、この棚は「江戸」の文化でつながっています。
雑誌「東京人」の編集をしていた著者 鈴木伸子さんの作品
東京の都心部に、張り巡らされた地下鉄。
地下鉄駅周辺には「昭和」の面影が残っている街並みがあります。
地下鉄を使った東京の散歩には、最適なガイドブックになるでしょう。
長くなるのでまたにする。/幻冬舎
特集の文脈棚で発見、この日は人生の悩み相談つながりでした。
演劇界の奇才であり、作家としても活躍している宮沢章夫さんの作品
日常の何気ないことをエッセイとして綴っているのですが、
著者の独特な視点を通して、ジワジワとくる笑いを引き出してくれます。
思わず吹き出しそうになりますので、電車で読む時は要注意です。


今日5月3日は、不忍ブックストリートで一箱古本市を開催していました。
その影響もあってか、往来堂書店には多くのお客さんが来店されていました。
こんな素敵な本屋さんが、これからもずっと存続していけるように、心から願います。


(了)