車のエンジン振動について | 「かつのブログ」

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ごく適当なことを、いい加減に書こうかとw

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 車のエンジン振動と、2気筒の可能性について 

いきなり、何の話だと思われるかもしれませんが・・・クルマ雑誌やらネットの車情報誌やら見ていると、専門雑誌の記者ですら、エンジンの振動について、ほとんど理解していないのではないか?としか思えない記事が目につくのですわw
で、私の理解するところなど、述べてみようかと思いたったわけです。もっとも、もうすぐにエンジンそのものが無くなるという噂もありますがwww


まずは基本から

車のエンジンってぇのは、筒の中で爆発する力を回転力に変換することで、推進する力を得ています。こういうのを内燃機関、と言いますわな。
けどね、イメージし難いかもしれませんが、実はエンジンの筒内での爆発は、振動とは直接には関係が無いんですわ。ここからして、間違っている人が非常に多いように思います。爆発によって大きく振動するわけではないのですよ。

 

まあ筒内の爆発による影響が完全にゼロだとは言いませんが、それは主たる要因ではありません。エンジン振動のおもな要因は、その回転のバランスにあります。 いちばん簡単な例として、単気筒のエンジンを考えてみましょう。エンジンってものは、ピストンの上下運動を回転運動に変換しています(下図1.)。

 図1. 単気筒エンジン(1)

 

ピストンが上下に動いているのを、クランクシャフトで回転運動に変える訳ですが、ピストンの上下運動の反作用で、エンジン本体は上下に動いてしてしまいますよね。
つまり問題は、コンロッドを含むピストン自体の慣性力です。 これだとマズイので、クランクシャフトの反対側にカウンターウェイトを設けるわけです。こうすれば、(コンロッドを含む)ピストンの重さによる慣性力とカウンターウェイトの重さによる慣性力がバランスして、エンジンは上下に振動しなくなりますよね? メデタシ、メデタシw

 

ところが・・・ピストンそのものは上下にしか動きませんが、カウンターウェイトは回転しています。カウンターウェイトがピストンの真横に向かう時、その慣性力を打ち消す力は何もありませんから、エンジンは横方向に振動する事になります(下図2.)。

 図2. 単気筒エンジン(2)

 

真横の時だけじゃなくて、実際にはちょっとでも上下からずれていれば、その「ずれ分」だけは振動します。つまりピストンの運動とベクトルの方向がずれた分だけ、振動の大きさがサインカーブ(三角関数)で変化することになります。だからエンジンの回転に完全に同期して、サインカーブで振動する訳です。sin(ω) が回転と同じ周波数になるので、これを1次振動と呼びます。もし2倍の周期(つまりsin2ω)の振動なら2次振動と言います (但しこれは単気筒では出てきませんが)。3倍とか奇数次の振動というのは、何気筒だろうと起こり得ません(これもたまに車雑誌では変なことが書いてありますので、注意喚起しておきますw)。 4次以上は非常に小さいので、無視できます。高次の振動ほど、その振幅は級数的に減少します。

 


2気筒エンジンの振動

では2気筒の場合には、どうなるのか? 99.9%の車に使われている4ストロークエンジンは、2回転(720°)で1周期になります。だから、もし2気筒で爆発間隔を等しくしようとすると、360°毎に爆発させることになります。

その場合には、直列2気筒ならピストンの位置(クランクの位相角)は同じになり、当然、振動としては、同じピストン重量の単気筒エンジンの倍になります(下図3.左)

   図3. 直列2気筒エンジン二種

 

もし爆発間隔を気にしないのであれば、クランクの位相角度を180°にすれば、ピストンの位置は正反対に動く事になり、1次振動は打ち消されます(上図3.右)。 但し、単気筒や360°クランクの2気筒では発生しない、2次振動が出てきますが、振動の大きさは 1次振動よりもずっと小さくなります。

 

またクランクが反対の位相で動くので、クランクシャフトに対してねじる力がかかり、クランクシャフト全体が、「すりこぎ運動」 します。これを偶力振動と言います(下図4.)。

  図4. 偶力振動

 


4気筒エンジンの振動

これに対して直列4気筒の場合には、下図5.のように180°クランクの2気筒を2つ組み合わせた形になります。そして点火順序さえ考えれば、等間隔爆発が可能です。更に左右対称になるので、偶力振動はありません。

 図5. 直列4気筒

 

但し、2次振動は同じ重さのピストンの2気筒の2倍になります。だって同じ動きをするものが倍になるんですものw ただ通常、2次振動が問題になるのは高回転域なので、4輪車で普段の街乗りでは気にならないって事でしょうね。
実際、4気筒でバランサーの無い車もありますからね。というか、昔は殆どの4気筒エンジンの車に付いていませんでした。4気筒の2軸バランサーを最初に流行らしたのは三菱じゃないですかね。 

 


90度V型2気筒エンジンの場合

90度のV型2気筒エンジンの場合にも、1次振動はゼロになります。これも、クルマ雑誌の編集者は理解していない人が多いですがw バイクでは割と知られているみたいですね。

最初に単気筒の1次振動の話では、縦の動きが打ち消されても水平方向へのカウンターウェイトの動きは打ち消されない、という話を書きました。ところが下図6.を見れば解るように、その水平方向への動きに対して、90度のピストンの動きが打ち消すからです。

 図6.  90度V型2気筒

 もちろん、90度のピストンはあくまで水平動作であってカウンターウェイトは円運動になりますから、2次振動は残りますが、それも直列2気筒よりも小さくなるのは、普通に納得できる話だと思います。当然、直列4気筒よりも遥かに小さいです。
更にもう一つ、直列2気筒に比して良い点は、偶力振動が発生しないことです。クランクピンを共用しているので、ひねる力が発生しないからです。これもちょっと考えれば分かると思います。

バイクではこの形式では普通にありますが、上述の理由で大排気量車であっても、90度V型2気筒にバランサーは普通は付いていません。
因みに、私がかつて乗っていた Ducati のエンジンはこれでした。750ccだったから、軽四よりも大きいエンジンの2気筒になるわけですが、振動は問題になりませんでしたし、経験的にVツインの低速でのトルク感は、並列2気筒よりも大きい感じがします。なぜかは知りませんがw

 


水平対向エンジン

ここまでの話ではカウンターウェイトの存在を前提としてきましたが、例外があって、水平対向エンジンの場合には、そもそもカウンターウェイトが必要ありません。何故なら、ピストンが同期して振動を打ち消す方向に動くからです。対抗するピストンそのものがカウンターウェイトになっている、と言っても良いです。

 

この辺の写真を見ると、水平対向エンジンのクランクに重りがなくて、やけに薄いのが分かるでしょう。俗にカミソリクランクなんて言われていますがw 
https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1273449.html

 

カウンターウェイトが不要であるということは、1次のみならず、高次の振動も無いということです。但し、V型2気筒のようにクランクピンを共用するわけではないので、水平対向2気筒の場合には すりこぎ運動による偶力振動は残りますが、距離が短くなるので、直列2気筒よりずっと小さくなります。だから、水平対向エンジンは2気筒でも振動は極めて小さくなります。

 

ここで一言。12気筒エンジンの場合、クランクピンを共用した形での水平対向がありえます。例を上げれば、ベルリネッタ・ボクサーに積まれた、フェラーリの水平対向12気筒がそれです。これについて日本の雑誌では、「クランクピンを共用しているからこれは180度V型12気筒だ」、なんてお馬鹿な話が書かれていることが多いです。

でもこれ、日本以外では見られない記述なんですよね。そもそもベルリネッタ・ボクサーって水平対向エンジンのクーペって意味だしw

 

なんでクランクピンを共用しているかと言えば、元々、直列6気筒エンジンの振動は完全バランスしますから、直列6気筒を 2つ並べた12気筒では言うまでもなくて、わざわざコストをかけてクランクピンを別にする(エンジンも大きく重くなるし)技術的な理由ってのが存在しないんですわ。
それに、その理屈だとホンダの位相クランクのV型4気筒(バイクであります)は、「実は76度の水平対向4気筒である」ってトンデモない話になってしまいそうなw

 技術的視点からして無意味な話ですから、あんましクルマ雑誌の馬鹿話を真に受けないほうが宜しいかとw

 


Kを含むコンパクトカーに、2気筒がなぜ積まれないのか?

閑話休題、話を2気筒に戻しましょうw
2気筒の車がなくなりましたが、最近での唯一の例外がフィアット・チンクエチェントの直列2気筒(360度クランク)でしょうね。軽4輪が550ccの時代には、むしろ2気筒が普通でしたが、いずれも360度クランクの直列2気筒だけでした。360cc時代の軽には90度V型とか、800ccで空冷の水平対向2気筒なんてのもありましたが。

 

ではなぜ90度V型2気筒や水平対向2気筒の車が今はないのかと言えば、今の小型車はFFが普通だからです。FFの場合には、エンジンを横置き(クランクシャフトの向きが横向き)にすることで、ギヤボックスと素直につながってそのまま駆動輪へと導けるから、都合が良いわけです。
だけど、90度V型2気筒や水平対向2気筒は、どうしても縦置きになっちゃうんですよね。

 

ただ何事にも例外はあって、例えばアルファロメオのアルファ・スッド及びその後継の33という車は、水平対向4気筒エンジンを縦に積んだFFでした。スバル1000もそうでしたね。水平対向エンジンの横置きってのは、バカ長くなるから搭載不可能ですからねw
水平対向はエンジン幅が広くなるという別の問題もあるのですが、アルファは敢えてOHVにすることでヘッドをコンパクトにすることで、この問題を避けていました。(アルファロメオは量産車では最初にDOHCを採用した会社ですから、OHVは異例なのですわ。実はアメリカンV8が今でもOHVなのも同じ理由で、コンパクトなヘッドでエンジン高を低くして、ボンネットを低くカッコ良くするためですw)

 

で、FFとは逆にFRとかMRやRRだと縦置きの方が都合が良い訳です。昔のポルシェや古いワーゲン(旧ビートル)が、空冷の水平対向エンジンをリアに積んでいたのはよく知られていますわね。

 

ちなみにVWビートルの時代だと、同時代のアメ車にもシボレー・コルヴェアなんてマニアックな車がありますな。当時のポルシェ同様に、空冷の水平対向6気筒エンジンをRRに積んで、何故か2速ATってよくわからん組み合わせの車がw

 

ただ、これにもやっぱり例外があって、トヨタMR2は横置きのMRというレイアウトです(俗に言う、なんちゃってミドシップw)。言ってみればFFのパッケージングをそのまま後ろに持って行った感じにして、コストダウンと小型化を図ったわけですな。でもそのおかげで、あの車、小さなMRのくせにリアにトランクがちゃんとあるんですよね。これって実はスゴイことなんですわw

 

水平対向の場合には、現代のコンパクトカーにするにはボア・ストロークの問題もありますな。現代の車で最も重視される「燃費」との関係から言えば、ストロークは長くしたい。なんせ、ダウンサイジング・ターボに代表されるように、最近の車が排気量と気筒数を減らしている最大の理由は「燃費」なんですからw 

 

しかし水平対向でロングストロークにすればエンジン幅は広くなり、コンパクトにするのは難しくなります。効率を高めるためにDOHCにするなら、なおのことね。OHVで4バルブなんてのも(前例はあるけどw)、ちょっとナンですしねw それに燃焼室形状や可変タイミングの問題もあるし。だから軽4の水平対向はかなり難しいと思うのですが、普通の小型車なら、アリじゃないですかね?

実際、"86"は水平対向4気筒のFRだった訳ですが、昔のホンダ車とかみたく、MRで座席下にエンジンを積んだ水平対向のコンパクト・カーなんてのは良いと思いますけどねw

 

90度V型2気筒なら、水平対向よりは易しいでしょう。振動だけで言えばこれでも良いわけですが、縦置きになるって点がねぇ。RRなら問題ないんですが。

 

でも、だったら180度クランクの直列2気筒を横置きFFで良い、ってことになりそうな気がするのに、何故かそれはありません。
だから残る疑問は、なぜ車には180度クランクの直列2気筒がないのか、ということ。軽も今や全てが3気筒になってしまいましたわね。もちろん、今更に、わざわざ新たに開発コストを掛ける意味が無いってのもあるんでしょう。
ただ過去に遡っても、180度クランク2気筒の例が全く無いってのが、私には不思議でしてw
振動の問題ではないのだから、あるとすれば不等間隔爆発によるトルク変動ですかねぇ。でもそれが問題になるんですかね?

 

実は歴史的には、その昔V6が初めて登場した頃、海外のメーカーで不等間隔爆発の方が多かったんです。アルファロメオが位相クランクを設けたV6 (アルファの傑作エンジンと言われました) を出して、これが最初の等間隔爆発のV6だったんですけど、それを日産がパクって日本では大ヒットしましたw これも雑誌では振動がどうこうと書いてありますが、V6の振動で問題になるのは偶力振動だけですから、Vの鋏角や位相クランクは関係ありませんw
そう考えると、もちろんそれなりに等間隔爆発の利点はあるんでしょうけど、どっちかと言うと音が静かになるとか、マフラーへの排気管の取り回し(排気干渉の関係から)とか、そんな理由の方が大きいんじゃないかな、と。

 

現在のコンパクトカー、特に軽4輪は、全て直列3気筒です。直列3気筒は、実は1次振動も2次振動もゼロです。但し偶力振動は最も大きくなりますから、そのバランサーが必要になります。
効率(燃費)を求めるなら180度クランク直列2気筒の方が勝ち、振動モードでも二次のみのですから勝ちw 3気筒に劣るのは、音の大きさと等間隔爆発じゃないってだけなんですが。そりゃ2気筒よりも3気筒のほうが静かなのは間違いないですけどね。

 

90度V型2気筒でRRなら、バランサーも要らないから、更に効率は上がります(バランサーと言うのは振動エネルギーを別エネルギーで打ち消すのですから、当然、その分だけ損失になります。エネルギーは保存しますからねw)。
最近では、ルノーのトウィンゴはラゲッジルームの下に3気筒を横置きしたRRですけど、V型にするならもっと背が低くて、しかも縦置きできるから都合が良いのではないかと? 
これも無いのは、やっぱり不等間隔爆発だから?

 

もしかしたら、世の中の人が「エンジンの振動」だと思っているものって、なにか別の話だったりしますかね?w

 


どーでもいい話

この話を書くのは割と簡単だったんだけど、何に苦労したって、絵ですwww
説明のための図を書くのに、何時間もかかりました。どっかの絵をパクるのも考えたけど、それは法律に違反しますからな。