子供のころの記憶ってものすごくあいまいで、そしてすぐ心の奥底に沈んでしまいます。
「デジャ・ヴ」(既視感)という言葉がありますが、あれって子供の頃に覚えていた記憶がなにかの拍子に蘇ったのではないか、と邪推してしまうことがあります。
記憶は土手と同じで何かの拍子に決壊してしまうととめどなくあふれてしまいます。
自分もこういう経験がありますが、楽しいような怖いような気分になったのを覚えています。
この小説の大きなテーマはこの「記憶」。
子供のころの記憶があいまいのは、前世の記憶や羊水での記憶がつながっているせいかもしれません。
「予感」という言葉。
人は「五感」がありますが、それ以前に「六感」もあったことでしょう。
「食指が動く」のことわざの元になった中国の政治家は自分が死ぬのも予感したといいますし、
ノストラダムスは自分の死も予言した、という逸話もあります。
「予感」とはそんなかつての感覚のなごりかもしれません。
それを持っている人もいるはずです。
それは幸せなのでしょうか?それとも不幸せなのでしょうか?
そんなことを思いました。
内容はひどく重く、くらいはずなのですが、そんな雰囲気はみじんもしません。
暖かい毛布にくるまれているような、暖かいスープを飲んだような、そんな幸福感に包まれる小説です。
・読んだ日:'98/04/14~04/20。
『哀しい予感』
- 吉本 ばなな(よしもと ばなな) 出版社 : 角川書店 出版日 : 1991/09/15(書籍は'88/12/15出版) 売り上げランキング : 43,591 おすすめ平均 : → Amazonで詳しく見てみる |