「夜」というある種の“怖さ”を感じさせる空間を題材にした3つの短編集。
夏目漱石の『夢十夜』をほうふつとさせるような不思議な雰囲気。
表題作『白河夜船』・『夜と夜の旅人』・『ある体験』の3話のオムニバス。
自分と向き合いすぎて、眠ることでしか自分を解放することができなくなってしまって女。
そこに存在すること、生きていることを愛する男。
過去を愛せない男と過去を愛し続ける女。
おすすめは表題作『白河夜船』。
主人公の眠りがどんどん深く長くなって、埋められない淋しさが・・・
そんな女性の再生のお話なんです。
眠りと覚ざめのバランスが崩れてしまうことってけっこうありますよね。
それをここまでの物語に出来る力量に感服です。
また、最後の『ある体験』もいいです。
大事にしていたものを失った喪失感の描写とその雰囲気の描き方がとにかく上手です。
それぞれに特有の優しさや冷たさ、せつなさ、やるせなさを持っています。
それは誰もが最初から持ち合わせているものだと思います。でも独自のものではなく、共鳴する部分や共有する部分は必ずあると思います。
この小説はどれもそんな「他人」と「自分」が「夜」という空間に存在しています。
不思議で、暖かくて、少し怖くて・・・「夜」がそれをすごく上手に演出しています。
永遠に続くように思えていつのまにか朝が来てしまう・・・。
そんな「夜」に起きた出来事はやっぱり「白河夜船」で寝過ごして気付かないことなのかもしれません。
本当にあったことだとしても。
・読んだ日:'98/02/09。
この写真 → は、書籍発刊当時の画像です。福武書店さんでしたね~当時。懐かしい・・・。
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『白河夜船』
- 吉本 ばなな(よしもと ばなな) 出版年 : '02/09(書籍は'89/07/10出版) |

