「立ち止まらずに歩いてくださーい!」


赤い蛍光棒を持った男性が集まってくる「ギャラリー」に向かって、三秒おきに叫んでいた。


一瞬散っては、またすぐ人だかりが出来る。


その中心にいたのは、今もっとも注目されているうちの一人である、有名女優。


ドラマのロケだった。


寒空の中、何時間も同じ場所で、似たような撮影が続いていた。


昔からその女優のファンであったチィも、販促(キャッチ)をこなしつつ、
様子を見ていた。


〈必死になって呼び掛けても、みんな向こうのロケに注目してるなあ。なんか凄い対比的ー。〉


販促は、上手くつかまえればこの上ない達成感を得られる反面、何も成果なく外ににいるとかなり追い詰められるものだった。


でも、チィにはふつふつと反骨心のようなネガティブからくるプラスのエネルギーを感じていた。


〈あの女優だってめちゃくちゃ努力して注目されるようになったんだ。俺だって負けない。注目される側になってやる〉


独立まで二年の期限を決めたチィは、また走り出そうとしていた。

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