妊婦だった頃、やたらと食べたくなった料理がある。
それはサンラータン麺。中華料理屋で注文できる、酸っぱくて辛いラーメンである。
妊婦さんが塩辛い物を食べたければお腹の子は男の子、甘いものを食べたければ女の子、という言い伝えがフランスにはあるらしい。私の場合は2回とも塩辛い系、しかもこってり油ぎった料理が食べたかった。
例としては…焼き肉を筆頭とした肉料理、豚骨を中心としたラーメン、あとスパイシーなエスニック系。タイの辛いラーメンとか、一度思いついたら食べずに済ませるのが難しいほど。
サンラータン麺はそうした料理の一つで、特に首都圏にいくつか店を持つ「ミンミン」のものを私は愛した。
ミンミンは餃子も有名でサンラータン麺と餃子という黄金メニューによってお腹の子はスクスクと育った(←というのは誇張で3回位しか行ってないが。)
さて、先日。産後初めてミンミンでサンラータン麺を食べた。ところが…妊婦の頃の感動がない。どうしたことだろう?
実は私がいきつけのお店は移転によって小綺麗な店になっており、かつての町中にある中華屋の雰囲気がなくなっていた。これかな?
麺やスープの具合が悪いわけではない。店の雰囲気の違いとともに思ったのは、私がもはや妊婦ではないことである。
あの、胃袋から手がでるほどに渇望していたサンラータン麺への思い、あれがあったからこそあのお料理は格別おいしかったのだ。あれが妊婦期限定であったことを今回初めて思い知った。
もちろん、ミンミンのサンラータン麺はそれなりにおいしい。でも私はもう二度とあの頃みたいにガツガツとそれをいただくことはできない。
切ない気分で中華料理屋を後にした日だった。