師のコンサート | WITH HOPE!!

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在英14年目、イギリスの生活を愛し、楽しんでいるMiyukiです。
イギリスで細々と演奏活動をしているので、クラシック音楽の話題、日常、イギリスの姿をお伝えしたいと思います。
バレエが好きで、ロイヤルバレエの公演を主に観ているので、その感想も。

晴れているのだか、雨なのだかわからず、寒いのだか暖かいのだかもわからない日中でした。

 夕方は、寒くて、Hail Stoneが降ったりも。


 今日は、バスを2本乗り継ぎ、2駅チューブに乗って、西ロンドンのアクトンまで。


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 駅から、5分ほど歩くと、立派な門が。

 ここよりもちょっと手前には、まるでお城のような入り口も。

 どうやら、刑務所のようです。

 この写真の門は不明。 写真右奥が刑務所らしい。


 しばらくいくと、素敵なレンガの建物が見えて、そこは、病院。

 私が通った、ロイヤル・カレッジ・オブ・ミュージックの隣にあるのが、インペリアル・カレッジ。

 理系大学です。

 私は、2007年に1年間、インペリアルのダンス・クラブに所属させて頂いたこともあります。


 ケンジントンから離れたここに、インペリアルの医学部があるようです。

 そこのレクチャー・シアターが今日行った場所。

 ちなみに、私はよくわからないけれど行ってみたのですが、このレクチャー・シアターがある場所がわかりにくくて、散々迷いました。 しかも、セキュリティーがとっても厳しくて、危うく入れないところでした。 



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 こちらがレクチャーシアター。

 午後1時からのランチタイム・コンサートを聴きに行きました。

 オーディエンスのほとんどは、ここの医学部の学生、スタッフ、教授です。



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 今日のコンサートは、この方のピアノ。

 私がロイヤル・カレッジで師事した、ゴードン・ファーガス=トンプソン。

 昨日ネットで調べていて知ったのですが、今年3月に還暦を迎えられたようです。


 プログラムは、

 ショパン: 2つのノクターン 作品55 

 シューマン: 幻想曲 ハ長調 作品17


 実は、ゴードンの演奏を聴かせて頂くのは初めてのことです。

 たまに、レッスン室で弾きこみをしていらっしゃるのは聴いたことがありますが。


 私がこの場所についたら、ちょうど先生はリハーサルを終えて(開演15分前)、でていらしたところ。

 うっかり顔を合わせてしまいました。

 

『会えて嬉しいよ。 でも、今日はベスト・コンディションではないから、良い演奏ではないと思うから』

 

 どうやら、先生、というのは、ゴードンのような方でも、生徒(元)に言い訳をしたくなるようです。

 



 私は、Dr.Sとみっちり勉強した後にゴードンに2年間師事したので、ゴードンの生徒の中では異色の存在でした。 ピアニズムもゴードンとはずいぶん違いました。 が、ゴードンはそれをわかった上で、暴れ放題だった私のピアノを少々洗練させて下さったのです。

 ですが、私をずっと知っているサマーコースでお世話になる先生方は、

「みゆきはどこへ行ってしまったの? 確かに洗練されたけれど、あなたのよさはなくなった」

 とおっしゃったものです。

 

 今日は、ゴードンは、楽譜ありの演奏でした。


 ショパンのノクターンは、あまりゴードンのイメージにフィットしません。

 先生に教えて頂いていた時がよみがえるような演奏。 

 構築がしっかりしていて、洗練されている。

 ルバートなども、あらかじめ、しっかりと計算されています。

 とにかく、音色が豊かなDr.Sに師事した私にとって、ゴードンは音色がそれほど多くなく、レッスンを受けていた時も感じていましたが、音色の変化、というのはそれほどありません。

 だから、聴きながら、私だったら、こういう音の出し方をする、とか、こういう音にここで変える、とか思ってしまうのです。

 

 当時、ゴードンは私の和声感が非常に優れている、とおっしゃって、どうやったらそのようになるのか、分析を言いなさい、といわれたことがありました。

 私は??? まったく理解していなくて(基本的なことはもちろん知っていますよ)、演奏するときに和声の分析なんて一度もしたことがなかったので、先生は私のやっていることと、学術の理解力の差が激しすぎることにびっくりしすぎて、無言になったこともあります。

 そのようにいわれたのがわかるような気が・・・・


 

  それでも、久々にノクターンの55-2を聴きましたが、やはり良い曲。

 

 シューマンのファンタジーの方がゴードンにあっています。

 音の質はそれほどでないものの、クリアな音質をもっていらっしゃいますから、複雑なヴォイスも非常に明確です。

 第2楽章が、少々危なっかしい(先生らしくなく)とも思ったものの、とにかく、第3楽章も緻密で、構成力がはっきりとしていました。


 今日聴いていて思ったのは、あれほど、45歳以上のイギリス人の男の先生に師事するのは嫌だ(音楽性が合わない)、と言っていた私がゴードンとはどうにかなったのは、ゴードンがイギリス人にしては、プロジェクションがある演奏をする方だからだ、と今になってわかりました。 



 昼間からシューマンのファンタジーは少々重いですが、それでも、久々にこうしてピアノを聴くと心新たにがんばろう、と思うものです。

 自分自身が師事していた先生方の演奏、というのは特別。

 私自身、生徒がまた聴きたいな、と思える演奏をし続ける教師でありたいと思いました。


 終了後、先生の譜めくりをしていた、大学2年生の生徒さんと、主催者の方々と共に1時間ほど用意してあったサンドウィッチとワイン(私は飲めませんが)でおしゃべり。

 久々に、音楽の話に浸りました。


 本来は、外部の人にオープンされないコンサートのようですが、私はたまたまインターネットで検索していて見つけて、別に学生のみ、となっていなかったので、行ってしまったのですが、聴けてよかったです。


 


 

ゴードンの演奏は素晴らしかったのですが、やはり私は、この人の弟子です。

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 こちらが、私を手ほどきからここまで育ててくださった、Dr.S。

 5年位前の写真です。

 私が先生に出会ったのは先生が42歳の時ですが、

「60歳過ぎた、すごいおじいちゃん」

と母に報告したほどです。


 当時は、変な先生、としか思っていませんでしたが、私が音楽に進むことに決めて、マンチェスターの音大に進学した後、どれだけ私にぴったりな先生だったかを知りました。

 
 同業の奥様から、

「あなたたちは、お互いに最高の師と最高の生徒よね」

と言われたことがあるほどです。



 本当は、今日は私自身のコンサートがあるから、最初はゴードンのを聴きに行けない、と思っていたのですが、その街に今日は女王がいらっしゃるので、私のコンサートは来週に延期。

 とても良いタイミングでした。


 良い演奏を聴かせて頂いたから、私も来週、再来週に向けてがんばろうと思います。