■プレシーズン最後のテストマッチの意義

 

 上海でのマンチェスター2クラブとのテストマッチを終え、最後のテストマッチ2試合をスイスで行ったドルトムント。既知の通り、ギュンドアン、ミキタリアン、フンメルスの昨年の主力3選手と、クロップ時代の黄金期を支えた“クバ”ことバワシュチコフスキ、BVBでは力を発揮できなかったライトナーをそれぞれヴォルフスブルグ、ラツィオに放出した。真価が問われるトゥヘル政権2年目は、大幅なリニューアルとともにスタートした。

 

 EUROを戦った選手は上海遠征には参加していないため、この最後のテストマッチ2試合が全メンバーがそろった貴重な試合となった。しかし、ほかのビッグクラブと同じく、EURO参加組と非参加組では、合流時期に1か月近く差があり、コンディションもばらばらである。最後のテストマッチ2試合、サンダーランド戦とアスレチック・ビルバオ戦は、それぞれ1-1、0-1と結果は残せなかったが、まだこの時期に結果が云々というのは時期尚早だ。だが、この2試合からはトゥヘルの今季のプランが見えてきたことだけは確かだ。
 
■8月6日 vsサンダーランド △1-1

 

 

 メンバーはこの通り。昨年の後半戦で見られた形だ。4-2-3-1からポゼッション時はシュメルツァーが高い位置をとる。しかし、昨年と少し異なるのは、右サイドの幅を作っていたのは、昨年はMサイドハーフのミキタリアンだったが、この試合ではカストロではなくパスラックであった。カストロはサイドより中央でより輝くタイプであることから、多少のマイナーチェンジが見られた。

 

 

 後半に入ると、大幅にメンバーを変えてきた。どちらかというと前半戦で見られた形である。両SBが高い位置を取りながら、前線の3枚+香川で攻撃に厚みを持たせる。

 

 サンダーランド戦では、昨年の戦い方に新戦力をあたはめつつ、バランスを見極めていたようだ。

 

■8月10日 vsアスレティック・ビルバオ戦 ●0-1

 

 

 EUROに参加したシュールレ、ゲッツェ、ヴァイグル、ピシュチェク、コパアメリカに参加したプリシッチを起用したトゥヘル。この試合のテーマは香川とゲッツェの共存だったことは言うまでもない。

 

 

 

 後半に入ると、メンバーを大きく変えてきた。昨季の後半戦と似た形である。しかし、サンダーランド戦の前半と同様に、右サイドの幅を作るのはカストロではなく、パスラックであった。ミキタリアンのように幅を作りつつ、縦の突破力がある選手は今のドルトムントではシュールレとなる。シュールレがいないのであれば、縦の突破力には欠けるが、パスラックが幅を作る役割を担っていた。

 

 

トゥヘルは会見で、ゲッツェを「中央の選手」と語っている。これは、昨年のギュンドアンのポジションを指している。もしかしたら、トゥヘルを7番や10番だけではなく、8番のタスクを与えようとしているのかもしれない。

 

 

■今季序盤のドルトムントの戦い方

 

 基本的には昨年の戦い方がベースとなるだろう。
4-1-2-3を軸に戦った前半戦は47得点を決めた一方で、23失点を喫した。ウインターブレイクを挟んだ後半戦では、システムを4-2-3-1に変更し、得点を35に減らしたものの、失点を11に抑えた。

 

 バイエルン以外のブンデスのクラブであれば、ドルトムントがポゼッションする時間が長くなる展開が予想される。4-2-3-1の形からポゼッション時に3バック+2シャドーの布陣が基本となるが、相手が引いてきた場合のオプションとして前半戦の形「4-1-2-3」を活用する、というのが前半戦の戦い方になるだろう。

 

 注目すべきなのは、現地14日に行われる、バイエルンとのスーパーカップである。相手の指揮官はアンチェロッティに代わったといえ、ある程度ポゼッションをしてくることが予想される。結果を求めるのであれば、昨年同様、4-3-1-2や5-2-3という形も考えられるのだが、トゥヘルはこのように語っている。

 

「ベストのパフォーマンスを見せられるほど準備は進んでいない。状態は万全ではなく、すべてのポジションが準備万端なわけではない。それでも、明日はできる限りのことをやりたい」
「現時点での状態の目安になり、改善すべきポイントも見つけられるので楽しみにしているよ」

 

 このように語っていることからも、指揮官はこのスーパーカップでは結果より過程を求めているのかもしれない。すなわち、このバイエルンとの一戦が、最後のテストマッチになる。