社労士で、看護師の資格を持っている方がたまにいます。 この新型コロナウイルスで、お仕事いっぱいできたのかなあ、と憶測しています。

 

 本来看護師は医療職、その資格を取得したことで、一般の人より感染症や衛生対策の知識はあるははず。また、その職に一定の期間従事したのなら、当然に身についているべきものです。

 

 なにせノロ、インフルエンザは毎年のことです。褥瘡やそのほかの皮膚のトラブルもあり、細菌に関しての対処もしなければなりません。また、食中毒というものもあります。医療者としては、感染はもっとも気にするものの一つでしょう。

 

 医療者にとって衛生や感染症の知識は必須の知識。一般の人よりその知見を有すべき看護師で、かつ労務の専門家であり、したがって企業活動の知見を有すべき社労士であれば、今般のコロナウイルスにおける感染防止のための職場の在り方も、ある程度の対処方法も理解できたはずですよね。しかも関与先など具体的職場についての知識も有しているはずです。

 

 そうすると、具体的職場における感染予防措置は、絶対ではなくとも、ある程度効果のある方法でその実施を助言、指導できたものと思います。引く手あまた、新規のお客さんも多数に上ったのではないでしょうか。羨ましいですね!

 

 

 職場における感染症対策について、次の知見を有する者は助言できるはずです。

  • 職場がどのようなものか具体的に分かる。
  • 職場がどのようなものか具体的に分かっている。
  • その知見を、職場(事業とそのための施設)に具体的に当てはめられる。

 

●職場がどのようなものか具体的に分かる

 これは、その施設がどのようなものかの具体的知見です。外部者の出入りはどのくらいか、密集しているのか、労働者や会社外の人間の接触は、どこで、どのような態様で、どのくらいかを知っていることです。

 

●職場がどのようなものか具体的に分かっている

 これは、感染症がどのようなもので、その予防に必要な措置はなにか、そして、その措置に対し予防の有効性はどの程度かを理解していることです。たとえば、ノロはエンベロープのないウイルスで、その消毒にアルコールは有効ではありません。乾けばエアロゾル化しますから、次亜塩素酸で消毒し、嘔吐物などを放っておきません。

 

 潜伏期間という概念も重要ですね。今回の新型コロナは4日から6日くらいが平均と聞きます。もっとも、発症前に感染能力を有するとされることから、発症(徴候)を認めたときには、遅いかもしれません。ともあれ、このような知見です。

 

●その知見を、職場(事業とそのための施設)に具体的に当てはめられる

 職場は多様です。いわゆるワンオペの職場では、就業する労働者の咳などから直接他の労働者に感染させることはありません。しかし、病原体が無機物上で生き残る時間内に他の労働者が触れ、感染する可能性はあります。

 

 その際、その病原体がアルコールなどの消毒剤に弱ければ、交代時に接触する箇所の消毒で感染を防げます。ただし、その場合でも、密室空間中に漂う可能性や、トイレ、更衣室など意外なところを失念する危険性があることを了解する必要があります。

 

 そのような場所がある場合、対処法として、掲示により注意喚起することや、通路を変更することなど、感染症の性質と職場の個性に具体的にあてはめた助言ができれば、社会に役立つでしょう。

 

(社労士の役割?)

 社労士の役割として、このような衛生に関するものは本来の業務ではありませんし、もちろん大きな職場では関係ありません。大きな職場には、産業医がいますから(施行“令”5条で常時50人以上の労働者のいる職場に産業医、同4条により衛生管理者の選任義務。)。

 

 ですが、小さな職場は無数にあります。そして、開業社労士が関与するのは、大きな職場ではなく、このような職場のはずです(安全衛生推進者、衛生推進者は、常時10人以上の労働者(労安衛法12条の2、同施行規則12条の2)。ただ、感染症対策は対象外のはず。)。

 

 社労士としては、一般に門外の分野。ですが、ダブルライセンスの者にとっては門外とは言えません。そして、小さな職場では求められるものでもあります。そのような場合、『絶対ではない』と断ったうえ、専門家の知見を翻訳、媒介し、具体的職場で理解が進むよう助言するのは必要で有益なことでしょうね。