日本の政治は長らく、公務員の扱いを「上薄下厚」でやってきました。つまり、職層階級の低い公務員の給料が相対的に高いのです。40年間も上に冷たく、下に厚くしてきたのですから、「下厚」が重たくなるのも仕方ありません。その問題を鋭く突いているのが、みんなの党や大阪の橋下維新の会です。特に大阪の市役所職員は強烈に優遇されてきており、平松前市長は紛れもなく自治労寄りでしたから、橋下市長が厳しく出るのも当然です。

私は、自民党の最高決議機関である総務会で、2度にわたってこの問題を指摘しました。しかし、どうも反応が鈍いのです。自民党幹部は、中央官庁の幹部と話す機会が多くなります。官僚は、上薄下厚の影響を強く受けている人たちなので、「我々の給料はそんなに高くないですよ」と言われると、「そうだな、君たちの給料はそれほど高くない。毎晩、深夜残業という過酷な勤務もしているし」と、同情的になってしまいがちです。庶民目線のみんなの党や維新の会ほど、国民感情に敏感に反応できない面があります。

そのような立場の人たちは、「ただでさえ国際的に低いとされる官僚の給与をこれ以上下げたら、優秀な人材が官僚になりたがらない」という主張をしますが、私はそうは思いません。今、日本はワークシェアリングが進行中です。国の経済が製造業を中心に海外に流出し、国内が空洞化しつつあります。製造業を中心に輸出が減り、パナソニック、ソニー、ホンダなどの一流メーカーが、2011年度は軒並み何千億もの赤字を出しました。その結果、春闘もみんなマイナスです。いよいよ労働組合も賃金がカットされるのを認めざるを得なくなったわけです。これはつまり、増やせない賃金をみんなで分け合うことが現実に進行しているということです。日本がかつて不景気に陥ったとき、公務員に応募が殺到し、賃金を下げても優秀な人材は集まりました。公務員だけが「優秀な人が来ない」という名の下で、賃金カットできないというのはおかしいし、それができないのなら、日本もギリシャのようになってしまうでしょう。

加藤紘一オフィシャルサイトより
http://www.katokoichi.org/