中国で起きた高速道路追突の大事故は、今の中国の国家の体質を象徴するものでしょう。事故が起きた翌日には、大破した車両の一部を穴を掘って埋めてしまうという、信じられない行動をしています。さらには調査の結果も出ていないのにすぐに走り始めている。私は中国の動きについて、たいていのことでは驚きませんが、この地中埋設話だけは、心底驚きました。これほどまでに急ぐ理由の一端には、トラブル続きの鉄道省の思惑があるのでしょう。高速鉄道の入札にからむ巨額の収賄で、大臣が更迭されています。

最近日本は、中国経済が日本を追い抜いたといって意気消沈していました。確かにそのような数字が出ています。けれどもその実態は、中国は10倍の人口で日本を追い抜いたわけで、一人あたりの平均所得はまだ日本の10分の1です。また、中国のアメリカに対する輸出額が、日本からの対米輸出を追い抜いたといって大騒ぎしました。しかし、中国の輸出額の56.4%は、日本などの諸外国の企業が中国に投資、ないしは進出して製造したものを輸出しているのであって、中国そのものではありません。特に、中国の国営企業の輸出というのは、10%台しかないはずです。

事故を起こした中国の高速鉄道は、ご存知のとおり、中国が威信をかけて米国などに売り込みを図っていたものです。平均350キロを出せると胸を張っていましたが、車両開発の技術指導をした日本の企業が「それはまだムリです」と強く勧告して、300キロに抑えたと聞きます。

日本では、一定の地域内に新幹線が同時には存在しないという仕組みを確立し、新幹線が開通した1964年以来47年間、事故ゼロ、死者ゼロ。震災の起きた3・11の日には、運行中の全新幹線が、見事に緊急停止して事なきを得ています。

日本は末期的だという悲観論が目立つ昨今ですが、このように一つ一つの事象をチェックしてみると、日本はまだまだ捨てたものではありません。福島の原子力発電所の1号機~3号機は、すべてアメリカのGE製です。日立、東芝はそれをメンテナンスしているだけです。もちろん、アメリカの砂漠に置くために開発した原子力発電所を、日本の津波の多い海岸に置いたのですから、日本に責任があることには違い有りません。自前の技術であったのなら、このような事態にはならなかったのではないかと思わざるを得ません。


加藤紘一オフィシャルサイト
ビデオ&メッセージより
http://www.katokoichi.org