GWが明けて、新聞記者や経済界の人たちから、意見を求められることが続きました。

「GW明けには、菅さんが辞めて、民主党もガタガタっときて、現状打破ができると思ったら、何も変わらないですね」と。
「誰です、そんなことがあると言った人は?」と応えました。

現状が何とか変わってほしいと思って話しているうちに、それがこだまのようにあちこちに反響して、催眠術にかかったようになっていたのではないでしょうか。

昨今、民主党内で菅首相を下ろす、下ろさないで毎晩のように集会があるようですし、「自民党が不信任を出して、うちの菅を引退に追い込んでくれないか」、と思っている議員が100人を下らないとも聞きました。

不信任案を出したい気持ちは山々でも、自民党が小沢氏と組むということはあり得ません。一回政権交代をしたら、総選挙もしないで自民党に政権が戻ってくるなんてこともあり得ません。

ローマ帝国も末期になると政治的に大変混乱していたわけですが、皇帝を変えると新しい変化が生まれるかもしれないといって、やたらと皇帝が変わったのだと、作家の塩野七生さんが書いていました。

日本も総理大臣を変えれば、政権交代をすれば、郵便局をなくせば、若手が総理大臣になれば……。次から次へと、少々他力本願な希望でものが語られてきました。平成になってから、総理大臣が14人も生まれています。まるでローマ帝国の末期のようです。

その間、小沢一郎という人は一貫して存在感がありました。しかし、彼の国づくりの理念とは何だったのでしょう? 彼は確か、消費税を上げるために大連立をやろうとしたはずです。ところが菅首相が消費税を上げなきゃいけないと言うと、反対して足を引っ張っている。よく分からない人です。

今の自民党の総意は、自民党は自民党で政策提言をするなど、できることをやっていこうというものです。が、私は少々心配です。結局のところ対民主党の攻防戦の切り札をどうするのか。今想定されているカードとは、特例公債法案は参議院で通さない、公明党といっしょに抵抗しようものです。そうなれば、政府は借金できないので、8月末あたりから仕事ができなくなります。しかし私は、その手法には懐疑的です。政府を財源的に追い込んでいくやり方は、どこの国でも、政権を失った巨大政党の取る道です。しかし、必ず失敗します。自民党は44兆円までしか借金しなかった、今の政府は50兆を超えていると言い争っても、50歩100歩。ましてや3・11が起きた後です。そんなことをしていては、自民党に大きな批判が集まると思います。

また、もし公明党が子ども手当ての問題で「児童手当に戻すなら、特例公債法案に賛成しますよ」と言ったら……自民党は孤立します。心配は日増しに募るばかりです。


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