仙谷由人元官房長官が菅内閣から姿を消しました。

 8月下旬にできた菅第1次改造内閣は、「仙谷内閣」だったのではないかと言われていました。仙谷氏が手を広げすぎだということは、以前私もこのサイトでも書きましたが(仙谷官房長官の仕事ぶりについて)、ちょっと追加したいことがあります。

 菅直人総理大臣の体の中には“胎内仏”が2体鎮座していて、ふたりの実質総理がいたのではないか、と思うことがあります。ひとりは仙谷さん、もう1人は菅伸子夫人です。

 今回の第2次改造で内閣支持率が26%と微増したのは、このふたりの胎内総理がいなくなったため、という気がします。 仙谷氏については、尖閣諸島沖の事件が仙谷内閣の終焉につながったと思います。逮捕された中国人船長を釈放する際に、那覇地検に判断させる形式を取ったのは、仙谷氏が仕切った形でしたから、「政治主導で対中強硬政策を取ったんだから、引くときも政治責任でやるべきではないか」と批判の的になりました。

 伸子夫人については、やはり総理就任直後に奥さんが本(『あなたが総理になって、いったい日本の何が変わるの』)を書いたのがどうだったのか……。その内容はともかく、自衛隊員にとっての最高指揮官は総理大臣です。命を懸けて任務を遂行するときには、単に「指揮系統だから」というだけではなくて、カリスマ性があるトップに無言の信頼と尊敬を寄せることが必要なのだと思います。その関係を築く前に、上司が奥さんから素顔を暴露されるようでは、部下はついていきません。家の中のことは家の中で収め、日本の誰よりも権威のある偉い人物という役づくりをしなければいけないのです。しかし、その奥さんも、最近はめっきり静かになりました。

 ふたりの胎内総理がいなくなって、支持率微増。さて、これから勢いを盛り返せるでしょうか。今のところ、不支持率のほうが圧倒的に多く、事情は変わりません。

 内閣最初の改造をやった後というのは、支持率が下がることが多いのが最近の傾向です。だから微増でも評価されるのかもしれませんが、客観的に見て福田改造内閣の支持率よりももっと下がっているという事実は、かなりキツイはずです。
 1月5日に新年のメッセージを伝えようと、菅首相が意気込んで生出演したテレビ朝日の『報道ステーション』で、首相登場直後に視聴率が6.9%と、普段の半分にガクリと下がったことは、マスコミでも2チャンネルでもかなり騒がれていました。このままでは、ちょっと先行きは不吉です。

 かといって、自民党に追い風が吹くとも思えません。自民党がここまで民主党を追い込んでこられたのは、民主党の失策と同時に、参議院で公明党と共同歩調で動いてこられたからです。しかし、公明党は今年に入って、平成22年度2次補正予算に賛成をしました。自公が共同することで予算関連法案も参議院で阻止できるというのが、春先3月政変論の根拠なのですが、どうも公明党が最後まで予算関連法案反対を言い続けてくれるかどうか分かりません。そうなったとき、自民党は打つ手があるでしょうか……。

 4月の地方統一選挙は、自民党はかなりいい成績になるはず。それぞれの都道府県議会では、自民党は知事を排出している第一党、圧倒的「知事与党」なので、地方選では強いのです。それでもかならずしも衆院選と連動するとは限りません。今年前半は気の抜けない政局になりそうです。


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