新年、明けましておめでとうございます。虎年が終わり、兎年が始まりました。実は私、年男です。
年末、ある通信社の人から「年男としての抱負は?」と聞かれました、干支と政治を関連づけて考えていなかったので、とりあえず「がんばります」と答えました。
 また昨年は、多くの人から「この国どうなるのでしょう?」と問われました。政治生活40年の中で、こんなに根源的な不安を投げかけられたことはありません。となれば、新年は年男でもありますし、こういった周囲の声に答えが出せるように努力したいと思います。
 そのためには、ものの見方については整理しなければいけません。そして、それに基づく行動をすることですが、行動はのちのち行動でお答えしていくしかないと思っています。

 それで考えたのですが、昨年はつくづく「意外」な年でした。民主政権が意外なほどに期待はずれで、これも意外に世論は簡単に民主から離れていきました。鳩山政権に冷めた世論も、菅首相への交代で盛り返すに見えましたが、参議院前からだんだんと支持率が下がってしまいました。
 民主党に対する期待は一気に冷めましたが、だからといってそれが自民党の再浮上への期待につながってはいません。自民党の議員がちょっとでも民主党の批判をしようものなら、聞いている人は「もう飽きたよ、だったら自民党はどうなの?」「昔と同じことをやって許されると思うの?」となってしまいます。
 特に財界人やジャーナリスト、評論家には、積極的に民主党に期待していた人が多く、我々が「ほら見たことか」と言うと、血相を変えて怒る人たちが大勢います。しかし「一度民主党にやらせてみたら?」程度に思った人は、きわめて率直に「やっぱり民主党もダメですね。自民党ががんばらなくちゃ」と言ってくれます。それがまた意外や意外、若い人に多いのです。

 昨年といえば、池上彰さんが受けに受け、だいぶ本が売れているようです。確かに、彼がNHKの『週刊こどもニュース』をやっていたとき、いい年をした大人たちが「難しい新聞を読むよりあれのほうが分かりやすいんだよね」と酒のついでに言っていました。
 その池上さんの二番煎じなのか、朝日新聞が「ニュースのここがわからない」というコラムを連日載せるようになりました。それに悪乗りして言うわけではないですが、「日本政治がわからん!」というコラムをこのHPに書きたくなりました。

 その第一弾が、「昨年の意外や意外」を解説するというのはどうでしょうか? たとえば菅総理大臣が参議院選挙で消費税アップを提起して、それが原因で参議院選挙に負けたといわれ、民主党内部でも反菅陣営はそこをつついているようです。しかし、消費税増税は、最初に自民党が提起しています。もし問題提起したのが負けた原因だとすると、自民党のほうが大きく負けるはず。ところが地方一人区では、自民党が圧倒的に勝利しました。そして全国区の得票総数を見ると、民主党のほうが自民党より勝っています。どうもつじつまが合いません。
 ところがこれを、池上さんのように分かりやすく解説した新聞記事を見たことがない。新聞もテレビも週刊誌も、「消費税をテーマにすると選挙に負ける」を大前提にしているからです。

 私の考えはこうです。菅さんが消費税論議を持ち出したときに、「自民党が10%と言っているのを参考にして」などと余計なことを言ったのが間違いでした。消費税を5%~10%にすると言うことは、国民のみなさんに「どうか一時の間、生活水準を5%~10%切り下げてください、お願いですみなさん、これしか手はないのです」と言っているに等しいわけです。かなりの犠牲を国民に覚悟してくれという重要な演説だったのです。オバマ大統領ではありませんが、「これ以外手はないんです」と、国民の目を見て必死に言わなければいけません。
これは以前も書きましたが、敢え言えば男性がプロポーズするときに「君しかいないんです」と目をみて真剣に言うのと同じです。それを「うちのお母さんも君をいい子だって言ってたから」なんて言われたら、いっぺんに白けてしまうでしょう? そんな失敗に誰も気づいていない。先入観が目を曇らせているのです。

 昨年末、私の元に海外留学している日本の高校生たちから、1通のメールが届きました。今の日本の現状を憂い、未来を心配している内容でした。
 その質問に対しては、これから彼らとじっくりやりとりをしていきたいと思っています。その過程はこのHPでご紹介するつもりですが、まず気になったのが、その質問の内容です。「日本は消費税を提起すると首相がやめさせられるので、消費税は上げられないのではないか」→「モノを決めようとすると、すぐに首相がやめさせられる日本」→「何も決められない日本」という思考過程が見えました。
 これは、今の日本に蔓延するまったく論理の合わない思考過程と酷似しています。
 私に言わせれば、消費税で負けたのでもないのに負けたといい、それを根拠に重要な提案を決められない日本と思い、だから日本の将来は暗いと思う。問題を先入観で考えず、本質を整理して考えていく、私の「政治のここがわからん!」。これが第一回目の答えです。

 新年は、こんな感じでトラ年を反省しながら、虎のように獰猛ではありませんが、うさぎのように澄んだ目で、純粋に日本の政治を問い続けたいと思います。

 新年早々は、11日から2泊3日で中国に行ってきます。超党派で行く予定です。尖閣問題以降、「日中関係に関心を持つ」と言っただけで国賊のように言われかねない昨今の風潮です。日本と中国が角つき合わせて大喧嘩しながら、今後アジアで生きていけるとは思いません。どこに筋のいい接点がありうるのか、温家宝首相をはじめ、唐家セン(センは王へんに旋)氏、戴秉国氏など、中国外交部OB、北朝鮮専門家などと会ってしっかりと意見交換し、東アジアの混乱はどうやったら避けられるか、その道を私なりにビジョンを作りたいと思います。



加藤紘一オフィシャルサイトより
http://www.katokoichi.org/