カタック

カタックはBc5世紀ごろ、北インドに生まれ、他のイ ンド舞踊と同じく宗教的な起源を持ち、 クリシュナ (ヒンドウー教最高神)信仰 を主題にした演目が多い。古代、北インドの平野地帯でカタカ(語り部) が村々の寺院をまわってヒン ドウーの神々や叙事詩の英雄たちの物語 を想像力豊かに語って歩いたが、まもな く音楽と踊りを加えて演じるようになり、 これがやがて高度な舞踊形式に整えられ、 カタックの踊りへと発展していった。さ らに15世紀になると、北インドでヴィ シュス神(護持) への信仰が復活し、そ の神を題材とした舞踊、音楽、詩、絵画 が数多く創作されるようになって、舞踊 の演劇的な解釈を深めていった。

ムガール王 朝(1526-1858年)のイスラム文化の影 響を受けて、舞踊芸術として華やかな発 展をとげた踊りで、複雑なフットワーク と高速の回転の妙技が最大の特色となっている。 また、 ヒンドウー教との有和を計り独特のインド イスラム文化が宮廷を中心に開花し たムガール王朝のアクバル大帝 (在位 1556〜1605年)を頂点として、ペルシヤや中央アジアから集められた多くの踊り 手や音楽家たちによる華やかな宮廷舞踊 が繰り広げられるようになると、カタックもイスラムの宮廷で盛んに踊られるよ うになった。そこでカタックは多分に官 能的な要素を加えることになったが、同 時に一層洗練され、優雅さを備えた舞踊 となった。

今から150年程前には芸術、 学問の中心として栄えた都、ラクノーで プラカーシュジーとその息子タークル・ プラサドがカタックを今日のような形式 に確立することに情熱を注ぎ、彼らの子 孫が代々その偉業を受け継いで大きな流 れを築きあげた。今回来日するビル ジュ マハラージュもその名門舞踊家の 直系としてカタック舞踊の保存、育成に あたっている。また、カタックはラージャ スターン州のジャイブルでも盛んになり、 ラクナゥとジャイブルはカタックの二大流派の発祥地とされ、今日なお盛んに踊られている。他にバラナシガラナ、ライガルガラナ、などがある。

カタックの基本ポーズはバラタナティ アムやカタカリのように膝を折って構え ることはなく、直立の姿勢をとる。女性 は両方の足首にそれぞれ120個近くの 真鏡製の鈴をつけ、男性は150個余りつ けることもある。こんなにたくさんの鈴 をつける踊りはインドでも他にない。随 所に見られる、足を踏み鳴らして踊る踊 りはダンサーの即興で、伴奏の太鼓タブ ラに合わせて、もしくはそのリズムと対 立的に複雑なヴァリエーションを次第に速 度を早めながら踊っていく。フットワー クを強弱変化させたり、リズムのある一 点でまたは韻律が変化する時点で一瞬 止めるとき、鈴の音がこの魔術的なフッ トワークの魅力を一層高める。“タタカール”= tatkarと呼ばれるフットワークとタブラと のかけ合いは全く死に物狂いと言ってい いほどのもので、両者がびったり寸分の 狂いもなく合うためには、難解な数学の 問題を解くような集中力を要する。

“チャッカル”と呼ばれる旋回もカタッ クの特徴的な技法の一つで、インドでこ れほど数多く旋回を行う舞踊もない。優 れた舞踊手はチャッカルを何十回でも目 の誌むような早さで続け、ラハラと言われる循環メロディーの1拍目(サム)がくると、突然びたりと 静止してポーズをとり、一糸の乱れも見 せない。バランスとポーズ、コントロールがこの精密な芸術を支えている。

カタックの衣装は、ムガール帝国の宮 廷の服装の影響を受けており、男女とも 細いズボンをはき、女性は硬い布地のひ だ付きのスカートをはいていたが、17世 紀初め頃には薄い布地のスカートになり、 女性の動きを優雅に見せ、ステップ、旋回もしやすくなっている。また、ムガール王朝の影響は変則的なカタックのパターンを生み出し、遊びをフルに楽しん だ宮廷の雰囲気は、例えば舞踊手が観客と会話しながら踊るという柔軟性を持っ た踊りも生んだ。

通常 インド古典舞踊では、情緒的な物語を歌に合わせて踊るのが普通ですが、カタックのメインである、ヌリッタ形式の舞踊で­は、主にリズムのコンビネーション、リズムの面白さ自体を踊って行く。そのため、­情緒的な物語性はない。

フラメンコ、タップの源流とも言われるこの舞踊は、複雑な変拍子によるフットワーク、­旋律の視覚的表現としての所作、多用される旋回を特徴としています。またインド音楽と­言えば、tablaやsitarですが、この北インド古典音楽と古典的な形で、セッシ­ョンできるインド舞踊は、このカタックが有名です。

ダンサーは、これから自分が踊るリズムを口で歌いその後­、舞台中央で、今、歌ったリズムをタブラの伴奏で踊る。と言う事を繰り返しながら舞台­を進めて行きます。

この時、歌われるリズムをボールと言います。インド古典楽器タブラでは、タブラボール、カタックでは、ダンスボールと呼びます。

言葉の組み合わせで、タブラの奏法やダンスの振り付けを表します。

カタックの特徴の一つとして、カタックダンサーは、タブラ奏者並みのリズム能力を身につける必要があります。ほとんどの他の舞踊は、1曲ごとにレッスンを進めていきますが、このカタックでは、北インド古典音楽のリズムを習得しつつ、舞踊のレッスンも進めていきます。

実際、インドのクラスでは、グルジ(師匠)が、新しいダンスの振り付けを教える場合、

はじめに、ボールを口頭でリズムに合わせて、歌います。

弟子はこれを、正確に口頭で言えるようになるまで、繰り返して、何度も練習しなければなりません。グルジ(師匠)が、弟子のボールにokを出すまでは、リズムの修練に終始し、振り付けを教えてもらうことは、できません。ボールが、正確に言えるようになってはじめて、稽古場で踊ることが許されます。

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家元マハラジの言う通りカタックの純粋舞踊ヌリッタは、

『ストーリ・オブ・リズム・ムーヴメント』ですから一つ一つのリズムを正確に踊ることが非常に重要です。

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カタックのムーヴメントは、ムードラを使用しない。このことにおいて、カタックの所作は、芸能の法典「ナー テイヤ シャーストラ」によらない。

記号的、シンボリックな手話的な表現を行わない。アビナヤ=舞踊の演技的側面においても、手話的な記号である、ムードラを使わずより

パントマイム的な表現を行う。

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この動画は、クンジュビハリ自身が、音源製作、

カタック舞踊パフォーマンス、動画製作をしています。

この曲の前半では、ギター、ベース、シンセサイザー、ドラムループを使用しました。

そして後半では、シタールとタブラの音で踊っています。

インド舞踊カタックのコンポジションは、

ラクナゥ流派の伝統的

パルミルトゥクラ、パラン、です。

マハラジも踊っている伝統的コンポジションです。

音的には現代的な音造りですが、

構造はカタックの音楽そのもので、

旋律は、ラーガを使ったナグマでです。

タールは、ドルット ティーンタールです。

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