『ハミングベアのくる村』
(キャサリン・アップルゲイト作 チャールズ・サントン装画・挿し絵 尾高薫訳 偕成社 2024.1)
を読みました。
表紙に2匹の動物が絵が描かれています。
この物語のキーパーソン(!?)たちです。
クマに羽がはえているような生き物「ハミングベア」。
越冬のために物語の舞台のパーチャンス村にやってきて、青柳の木にきらきら光るあぶくのような巣をつくる。
村ではハミングベアがくるのを祝って、秋まつりを開催。
観光客がたくさん来て、それは村の人々にとって大きな収入源です。
イノシシのようなフォルムの青い動物は、「サケビー」です。
サケビーは、夜中にオンドリが酔っ払ったみないな耳をつんざく金切り声でさけび、怒ると大きなしっぽを地面にたたきつけて、強烈なにおいで襲ってきます。イノシシとスカンクを合体したようなどうぶつです。
観光客にとって有害だと考えられ、村の駆除対象となり、猟師に狙われ、個体数は激減します。
さて、物語の主人公、ウィロディーンは11歳。
小さい頃から少し変わった動物が好き。最近、大好きな動物は「サケビー」で、観察によりサケビーの個体数を観察しています。
父親から受け継いだ素質です。でも、6歳のときに山火事で家族を亡くします。
ウィロディーンは、近所の老女メイとバーディに育てられています。
ふたりに愛を感じながら、学校へは行かず、ひとりで過ごしています。
この物語は、ウィロディーンがコナーと出会い、自分が考えていることを人に伝えていくことで、周りに影響を及ぼすことを知り、成長していきます。
私は、
P.64 老女のひとり、バーディの
「大人なんて、子どもがたいくつになっちまっただけさ。」
P.78 ウィロディーンの
「メイとバーディは、人とちがうことは役に立つっていってる。」
に対し、コナーの
「うちの父さんは、人とちがうと人生がむずかしくなるっていうんだ。」
P.138 メイの
「世の中が変わっていくのは、あしたもお日さまがのぼるっていうこととおなじくらい、わかりきっている。問題は、どうつきあっていくかだ。」
P.162 ウィロディーンが老女メイとバーディに対して思う、
‟メイとバーディは、すべての答えを知ってはいないとみとめる、勇気ある大人だ。”
という言葉に、生きる道筋をもらいました。
架空の動物を使って、環境問題に言及している作品でもあります。
是非、小学校高学年以上の方に読んでいただきたいです。
「訳者あとがき」も是非お読みください。
クー