今日は、バングラディシュを舞台とした物語
『リキシャ★ガール』 (ミタリ・パーキンス作 ジェイミー・ホーガン絵 永瀬比奈訳 鈴木出版)
を紹介します。
この作品は、第56回青少年読書感想文全国コンクールの小学校高学年の部の課題図書だったので、ご存知の方が多いかもしれません。
主人公のナイマは10歳の女の子。
バングラディシュの伝統的な絵画であるアルポナを描かせたら村一番に選ばれるほどです。
ナイマは、リキシャで生計をたてる父と、母と妹の4人家族です。
リキシャというのは、人々が移動するのに利用する乗り物です。
バングラディシュでは、運転者が自転車をこぎ、お客さんを乗せるシートのついた車をひっぱり、目的地まで運転して稼ぐのです。
隣のうちには、サリームという幼馴染の男の子が住んでいます。
10歳になって二人は人の目を気にするようになり、なかなか会えなくなりました。
それに、サリームは父親を助け、父親と交代でリキシャで稼ぐようになっています。
ナイマの父親は、働きづめで、体もきつくなってきています。
なんとか父親を楽にしたいと、ある日ナイマはこっそり運転して、リキシャを壊してしまいます。
なんとか動くものの、シートは破れ、ブリキのパネルはぼこぼこになってしまうのです。
落ち込むナイマ。
このあたりのナイマの気持ちは、痛いほど伝わってきます。
お母さんのお母さんのお母さんが、お母さんから受け継がれたふたつのチュリ。
リキシャの修理代のため、売らなければならなくなりそうな状況を自分が引き起こしてしまった…
お母さんの手首で、ふたつのチュリが触れ合って奏でるやさしい音色は家族の音色なのに、その音色が永遠に失われようとしているのは、自分のせいなのだ…
ナイマの気持ちをよく分かったうえでの、父さんとお母さんの接し方がとても素敵です。
だからこそ、余計家族の役に立ちたいと思うのでしょう。
リキシャの修理店で働かせてもらおうとお願いすると、修理工は女の人でした。
その女の人は言うのです。
「ありがたいことに、父が兄たちに仕事を教えているとき、あたしはいつもそばにくっついていて、学べることはすべて学んだわ」
そういう力のつけ方は、先日読んだ 『博物館の少女 怪異研究事始め』 (富安陽子著 偕成社)も思い出させます。
地に足がついた生き方だと思います。
また女の人は、世の中の変化、「女性銀行」のことなどもナイマに伝え、自分で道を切り拓こうとしているナイマを認めてくれるのです。
とても嬉しい幸せな結末です。
2月12日に、私が好きな「とら」が出てくる子どもの本 ⑫に紹介した
『タイガー・ボーイ』 と同じ作家・訳者・版元です。
私が好きな「とら」が出てくる子どもの本 ⑫ | 家庭文庫どんぐり小屋 (ameblo.jp)
性別は違いますが、どちらも10歳が主人公の成長物語です。
その成長に関わる大人の役割や社会構造もよく描かれています。
是非、あわせてお読みください。
クー