東京はこの1週間で急速に日中の気温が下がり、昼でも厚手の上着が欲しいくらいです。
(息子撮影)
さて、今回は故・水木しげる先生の『のんのんばあとオレ』という自伝漫画を取り上げます。
私にとって水木しげると言えば白黒のテレビ版『ゲゲゲの鬼太郎』で、鬼太郎はじめ妖怪たちの戦いが記憶に残っています。
時は経って、ちょうど『ゲゲゲの女房』が放送されていた頃、「絶対読んだ方がいい!」と息子が勧めてきたのが、この本でした。
「のんのんばあ」とは、水木家に手伝いに来ていた老婆のことです。
作中、水木少年は、好きになった女の子を次々と病気で失います。
しかし、信心深いのんのんばあからあの世や魂の話を聞かされて育った水木少年は、父親やのんのんばあに支えられながら死を受け容れていきます。この過程を淡々と描くところが、水木しげる独特の飄々としたユーモアに繋がっている気がします。
また私がこの漫画で1番好きな登場人物は、水木しげるのお父さんです。
東京の大学出身で、単身赴任をしている彼は、息子同様飄々としていて、哲学的で、魅力的な台詞の宝庫です。
例えば、しげるの兄が失恋して首吊り自殺をしようとしたときのこんな台詞。
(「男にとって女は教師だよ 学校なんかじゃ教われないいろんなことを教えてくれる 学校なんかやめてもええが女に恋することをやめたらあかん」)
グッとくるものがあります。
妖怪と絵の世界に没頭する水木少年とはどこか通じるところがあり、このお父さんあっての水木しげるだったのだなと思います。
物語としての優しさと深さだけでなく、細密画のような背景とデフォルメされたキャラクターのコントラストも美しい漫画です。何か面白いものはないか探している人にはぜひ手に取って欲しい名作です!