こんにちは。所長の太田です。
今回は、東日本大震災の後、日本国籍を取得して「日本人」となった日本文学者・ドナルド・キーンの展覧会の模様をお伝えします。
『ドナルド・キーン展』は京王線芦花公園駅からほど近い、世田谷文学館で現在開催中です。辺りは住宅街と樹々に囲まれ、しんとした静かな空気に包まれていました。
私はもともとドナルド・キーンの仕事を詳しく知っていた訳ではありませんでした。
ただし、私の地元・愛知県田原藩の家老である渡辺崋山についての著作(『渡辺崋山』)を読んだことがあり、それが今回展覧会に足を運ぶ動機になりました。
思想家であり画家であった崋山について、キーンが「獄舎で悲惨な生活を描いた数枚のスケッチで私は崋山についてさらに詳しく調べたいと思った」と記しているのが印象的でした。
ドナルド・キーンはニューヨークで生まれ、16歳でコロンビア大学に飛び級で入学した後、そこで出会った『源氏物語』に心奪われたそうです。時間も空間も飛び越えて、『源氏物語』との出会いが彼の将来を決めました。
戦後、キーンは京都に留学し、日本の文壇に知遇を得ました。留学を終えた後はコロンビア大学で教鞭をとりつつ、1年の半分を日本で過ごし、文壇でも存在感を示しました。
本展では、キーンと多くの著名な作家との往復書簡が展示されていて、それが最大の見どころの一つとなっていました。
現代であればメールなど電子でのやり取りが中心でしょうが、手書きの書簡は内容だけでなく筆遣いから立ち上る気配のようなものがあり、万年筆で書きつけられた個性的な文字から、作家の性格や思想を身近に感じることができました。
三島由紀夫との往復書簡は、三島が自決する直前のものも含まれていて、とりわけ深い印象を残しています。
ドナルド・キーンが愛した日本を、アメリカ生まれの彼の眼を通して再発見するような展覧会でした。
キーンは日本国籍の取得に際して、「被災地の日本人が苦しむ時に外国の安全な場所にいるのは耐えられない」と語っています。
キーンの愛した日本を、私も注意深く探してみたい、そんな気持ちにさせられました。



