以前、アニメ版の「ブラック・ジャック」は、出崎統版であれ、手塚眞版であれ、ずいぶん原作よりもお行儀がよいと書いた。
原作を、流し読みでなく、マジメに繰り返し読んでいると、以前、漠然と思った印象の、その根拠が具体的に見えてくる。
①まず、原作では、患者がバカスカ死んでゆく。
(治療の失敗や手遅れのこともあれば、治療の後の場合もある)
シャチのトリトン
手塚治虫の原作「シャチの詩」
手塚眞版アニメ「シャチの贈り物」
(原作のBJは、漁場荒らしの常習犯だったトリトンを、治療しないで死なせてしまった。
一方アニメでは、BJは、トリトンが漁師を救ったことを知って、治療を行う)
不良のジョーズ
手塚治虫の原作「帰ってきたあいつ」
手塚眞版アニメ「文化祭の用心棒」
(原作では、ジョーズは他校の不良たちとの喧嘩で心臓マヒ(多分)で死んでしまう。
アニメでは、この時点では死なず、BJの再手術で生き延びる)
犬のラルゴ
手塚治虫の原作「万引き犬」
手塚眞版アニメ「ひったくり犬」
(原作では、ラルゴは地震で下敷きになって死ぬが、アニメでは、この時点でまだ息があり、BJの手術で生き延びる)
ラルゴに取りすがって泣いていたが、身じろぎに気がついて泣きやんだピノコ。
アニメのラストの段階ではまだ死んでない。という場合もある。
手塚治虫の原作「戦争はなおも続く」
手塚眞版アニメ「戦争はなおも続く」
(原作では、イル国のルナンは出征後三日で戦死するが、アニメでは、出征までしか描かれず、その後の成り行きはわからない)
もう、挙げればきりがない。
原作通りに死ぬのは、
手塚治虫の原作「笑い上戸」
手塚眞版アニメ「笑い上戸の同級生」
くらいしか思いつかない。まあ、他にもあったかも知れないが。
②原作で、それらのエピソードの何割かでは、患者の死亡後のBJの反応が描かれるが、それが結構、赤裸々というか、感情全開である。というか、若いのである。
手塚治虫の原作「帰ってきたあいつ」
手塚眞版アニメ「文化祭の用心棒」
(=写真が悪いが、本を痛めたくない=。いうまでもなく、秋田書店刊)
「バカだな…あいつ…」というセリフは、アニメの大塚明夫の声では、少なくとも私には想像しにくい。
手塚治虫の原作「ふたりのピノコ」
手塚眞版アニメ「二人のピノコ」
(ロミちゃんが死んだ時なんて、原作ではこうである。
=アニメ版ではロミちゃんは死なない。BJの手術で回復する=)
原作中、感情放出描写は、「死」が絡んでいなくても存在する。例えば、
手塚治虫の原作「針」
手塚眞版アニメ「消えた針」
アニメのラストでは、
BJ「道はまだこれからだ」
原作では、こうである。
③原作では、殴り殴られるシーンがざらにある。
手塚眞版のアニメでは、BJが誰かを殴るシーンはほとんどない(思い出せない)。殴られるシーンも少ない。
「人面瘡の本音」「イルカと強盗団」で、犯人に殴られるくらいしか思いつかない。
手塚眞版「ブラック・ジャック21」より
episode.7 「百億円 命の約束」
無実のBJが、殴られながら取り調べられるシーン
この描写はもちろん原作にもあるのだが、アニメに比べて遥かに生々しい。
手塚治虫の原作「助けあい」
出崎統版「ブラック・ジャック」OVA
KARTE2「葬列遊戯」
麻薬常習者の若い外科医ともども、麻薬組織の男に殴られて気絶するシーンと、
(BJが殴られるカットは、うまくスクショとれなかった)
出崎統版「ブラック・ジャック」OVA
KARTE3「マリア達の勲章」で、ピストルを持ったままの握り拳で、人を殴るシーンがある。
(このような止め絵演出は出崎統&杉野昭夫ならではである。手塚眞も、「ブラック・ジャック21」のepisode.15「BJ 父親の真実」で杉野昭夫を作画監督に立てて止め絵演出を試みているが(この回のシナリオ・絵コンテは手塚眞)、まことにもうしわけないが、失敗していると思う)
(手塚眞版アニメと、出崎統版アニメでは、全般的に、出崎版の方が、多少生々しい。リアルというか…。)
原作では、単純な殴り殴られだけでなく、石を投げられてボロボロになったり、リンチにあったり、爆破に巻き込まれたり、まあ、いろいろある。
(もう、このあたりになると、写真を用意出来ない。私の頭には、まずアニメ版が入っており、それと関連づいていないエピソードは、コミックスの山のどこにあるか、さっぱり思い出せないのである。まあ、何も好き好んでこんな画像を集めなくても良かろう)
④原作ではとにかく手術シーンに内臓画がオンパレード。が、アニメ版、とくに手塚眞版では、手術シーンで手元を見せない。見せる時は腹を真横から描くことが多く、内臓をなるべく見せないように演出されている。
まあ、全くないわけではないけど。
手塚眞版「ブラック・ジャック」
KARTE:15 「偽りのウエディング」
指先が何をどのようにやっているのかは、描写されない。
原作「かりそめの愛を」
では、もちろん、内臓オンパレードである。
KARTE:35「病院ジャック」
原作「病院ジャック」では、暗闇描写でも、しっかり内臓が描かれている。
出崎統版「ブラック・ジャック」では、手塚眞版よりはリアルに描かれているが、それでもやはり控えめである。
(出崎統版では、各話、原作から大きく改変されており、アニメ←→原作の比較が無意味なので、アニメ版のスクショだけ貼っておく)
出崎統版「ブラック・ジャック」OVA
KARTE2 「葬列遊戯」
KARTE4 「拒食, ふたりの黒い医者」
実はこの項を書いていて、暴力シーンや血の描写を避けるのは、視聴者のみならず、制作スタッフを守るためもあるのかな。と思った。スクショを撮ったり、コミックスを写したりしていると、「おなかいっぱい」になるのである。気持ち悪くなる、というほどではなくても、いや、もう、そういう画像は沢山だから、…って感じ。
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他にも「生肉的な原作」と「お行儀のよいアニメ」を比べようと思ったら、題材はいろいろあるし、なんとも中途半端なのだが、今日はこれでおしまい。気が向いたら、これの続きを後日書いてみたい。
何でここでやめるかというと、スクショを貼り付けようとして、「写真の貼り付けは15枚までです」メッセージが出てしまったから。そんな制限があったのか…。
なにはともあれ、iOSのバージョンアップのせい(だと思う)で、ずいぶんamebaアプリの動作が変わってしまい、どうにも扱いにくくなっていて、苦心しながら書いた。つまらんバージョンアップはよしてほしいものだ。