引き続き、元彼くんの話です

ある日のデートでのこと



元彼くんはスマホでゲームをしていて

話すこともないのでYouTubeでも見ようと思い

なんとなくホーム画面を眺めていると


【トランプ大統領が「国防総省」を「戦争省」に改称する大統領令に署名をした】


というニュースが目に飛び込んできた




「戦争」って、なんで今あえてそんな言葉を



ひ「アメリカはまた戦争するのかな……」



「なんで?」



ひ「国防総省を戦争省に改称するって、ニュースが」



「なら、俺も行かないと」



思いがけない彼の言葉

感情を一切排したような抑揚のない声

 


ひ「なんで?」



「アメリカが行くなら、日本も行かないと」



ひ「元彼くんは行かない」



「それが俺の仕事だから」



ひ「元彼くんは行かない」



どうやら彼は

答えないつもりのようだ


しかし、ここで引き下がる私ではない



ひ「聞いてるのか?無視すんなこら」



次の瞬間

彼は私を後ろから抱きしめると

頬に手を添えて自分の方を向かせて

そのまま唇を重ねた


この体勢になるまでわずか10秒

彼が口を塞ぐので上手く話すことができずにいると



「静かになったな」



ひ「はぐらかさな……むぐ」



私が続きを話すことを諦めるまで

それは終わらなかった



彼はずっと前に、

自衛隊は軍隊で自分は軍人だと

言ったことがあった


彼が仕事で命を落とすことがないように

その危険が日常を脅かすことのないように

願うことしかできない



キスされたせいだろうか

彼を失いたくないと思っている自分に気付く



それは恋人として?

ある程度の期間関わったことがある者として?



私はいつだって

彼を捨てられるよう準備をしているはずだった