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元彼くんとデートに行ってきました



「久しぶり」と言いながら

私が車に乗り込むと

むわっとした夏の空気が一瞬だけ入り込んで

すぐにクーラーの冷気に押し返された


彼は「ん」と言いながら

すっ、とクーラーの温度を下げる


その手で私の右手を握ると

もう片方の手でハンドルを切った



車は快適だな……と思いながら

窓の外に目を向けると

日差しの中にふわりと揺れる浴衣姿が目に入った



ひ「ね、夏だしさ、浴衣着て」



「やだ、持ってない」



ひ「観光地とか行けばレンタルできるよ

私、着物着てる人好きなんだよね」



「じゃあ、そういうやつと付き合えば」



ひ「今付き合ってるのは元彼くんだから

元彼くんが着るの、イケメンだしいいじゃん」



「絶対やだ。着ない。」



ひ「彼女を喜ばせてやろうという気概はないのか」



というと、

舌を出してあっかんべーをしてきた


この反応はいつもの天邪鬼なんだろうなと分かった






最近元彼くんのIQの低下が甚だしい

すぐにあっかんべーをする


いつもはスカした彼の子どもっぽい姿が増えていくと

私ももう少し感情を出してもいいかな

って思える



ひ「元彼くん私の言ったこと

10個言ったら、1個しか叶えてくれない」



「10個言って1個ならいいだろ」



ひ「よくない!10言ったら100聞くの!

100も言ってないけど、10言ったら

そこから100拾って聞くの」



感情が思考を追い越していた


言ってる途中でおかしなことを言っているな……

と気付いたけれど

口に出してしまった言葉は

もうどうしようもない



「そんなにぷりぷりするな」



と言った彼の声音が

少し嬉しそうに聞こえたのは

気のせいだっただろうか……



感情のままに言葉を発したのは

いつ以来だっただろう

すごく久しぶりな気がした

気持ちがよかった