「経済の鍋」から漏れ出したお金は消えてなくなるわけではなく、投機予備軍として銀行に蓄積されている。その量は現在(2024年3月)膨大な量になっている。

その大きさは前の記事中のグラフを見れば視覚的にわかる。 1990年前後の「土地バブル」以前は名目GDP(国民総生産)と「マネーサプライ」は同程度で推移している。 これがまともな状態であるとすれば、それ以降のマネーサプライの増加が異常であることが分かる。

 

 

ここで改めて「経済」と「お金の総量」の関係を再確認するために、例のガルブレイスの”経済の鍋”を用いて経済とお金の関係をイラストした。

左側の”経済の鍋”はいわゆる「実体経済」を表している。 右側の桶にたまったお金は実体経済に参加していないお金でよりよい投資(投機)先を探して、株式や土地、金利の高い他国の通貨などを購入して利ザヤを稼ごうとうごめいているお金である。 

もちろんこのお金は、新しい技術が開発され新し産業がおこるとそれへの投資を通じて、実体経済に参加する重要な役割も持っている。

 

問題は投機・投資マネーが増えすぎた時に発生する。

分かり安い例は・・・、最近の急激な円安である。 これは、円金利が異次元金融緩和の中でゼロ%であるのに対してアメリカドルの金利が5%と高いので、円を売ってドルを買ってドルで預金すれば高い金利収入が得られる。 

金利差による利ザヤを稼ぐため、桶に溜まっていた膨大な投機マネーがドルを買って高い金利で運用しようとしたため、円安が進んだ。

円安は輸入物価を上げ国内製品の物価高を招き市民生活を直撃している。

投機マネーを持っているお金持ちはより金持ちになるが、お金を持たない一般市民は物価高に苦しんでいる。

 

本来、日銀の金融政策の目的は、実体経済がスムーズに安定して動くようにお金の量をコントロールすることである。 それにより、国民の経済活動を安定させしいては生活の安定を図ることである。

しかし、経済の鍋からあふれ出たお金(投機マネー)が多すぎるとこのような日銀の金融政策(公定歩合などの金利)の効果を投機マネーが邪魔することになり、日銀の金融政策を実体経済に反映しにくくなるのである。 

先日、日銀はゼロ金利政策をやめる政策転換を行うことを決めた、本来なら円の価値が高くなるので円安傾向が止まっていいはずなのであるが、その効果はあまりにも膨大な投機マネーの前で容易に反応しないという現象が発生している。

 

先日の植田日銀総裁は記者会見の場で『(異次元金融緩和終了後の)今後の目標は普通の金融政策が出来る環境を整えること』と発言されていました。

もっともな目標なのであるが・・・、増えすぎた鍋からあふれ出たマネーを回収することは容易ではない。 これまで日銀は野放図に輪転機を廻して国債や債券・株を買っていわゆる異次元金融緩和を続けてきた。 普通の金融政策が出来る環境を整えるということは、あふれ出たお金を回収する・・・と言うことで、今までとは逆に日銀が保有する国債・債権を売ってお金を回収しなければならない。 いわば輪転機を逆回転させるわけでそれは容易なことではない。