景気が低迷しているときには金利を下げ、債権を購入して・・・市場に多くのお金を供給する。 これにより、企業は銀行からお金が借りやすくなり投資が増える、それに伴い生産量が増え、それが家計の収入を増やすことにつながり、消費も活発化する・・・そして、経済が好循環に入る・・・・と言うのがこれまでの政府・日銀の経済政策であった。

しかし、この10年の安倍政権と黒田日銀の『異次元の金融緩和」にも関わらず、経済は低迷したままで、家計の実質賃金も下がり続けた。

何が問題だったのか?間違いは何処にあるのか? この10年の経済政策を総括し、これからの経済運営に反映させることは、失敗を繰り返さないためにも非常に重要である。

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一国の経済は、未成長期、高度成長期、安定期と推移して行く。

未成長期とは・・・、その日を食べて行くのが精一杯で、明日のため、来年のために貯蓄する余裕が無い経済である。貯蓄が無いということは将来の生産増産のための投資がなく、来年も今年と同じ生活、再来年も同じ(下記「経済成長の条件(その1)」を参照)・・・という状況である。 かって日本が戦争に負けた後の数年間はこの状態であった。

高度成長期とは・・・・、食べて行くのに精一杯のその日暮らしを脱し、生活に少し余裕ができてくると、家計は将来の消費ために貯蓄をし、企業はその貯蓄を増産のための投資に利用する・・・という好循環が生まれる。 高度経済成長の始まりである。 かって日本も年率5%、6%、と言った高成長が続いた時代があった。

安定期とは・・・・、人々の消費・生活の向上への欲望がほぼ満たされた状態で、今年より来年、再来年、より多くの消費をしたいという欲望が小さくなった状態である・・・。 しかし、全く消費意欲が無くなった訳ではなく、科学技術の進歩でより魅力的な製品が現れるとそれに対する消費は当然沸いてきて、それが穏やかな経済成長を促す(下記「経済成長の条件(その2)」を参照)。 安定期にある多くの国の経済成長率は一般に2%程度と見積もられている。 

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さて、ここで重要なことは、安部政権・黒田日銀の異次元の金融緩和政策、高度成長期に有効に働いた経済政策、はこの10年間何の効果も見せなかった・・・という事実である。 このことは日本経済は既に安定期に入っていたことを示している。

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問題は、安定期の経済政策はどうあるべきだったのだろうか・・・???