鎌倉末期から南北朝期、室町期に至る大和物 

 

大和物は他国の物と較べてその特色が際立っているといって良い。それは身幅の割りに鎬幅が広く鎬高の造りとなり、特に鎌倉期の物は平肉が豊かである。

 平肉が普通の状態は時代の下がる室町期に共通するものであると考えて概ね大過ない。反りは総反り(輸反り)で山城物に比して反りがやや浅い。鋒は山城物よりやや延びる気味でガッチリとする。

 地鉄は大杢目肌や板目が基調でそれに柾肌が交じり、部属によっては純然たる柾肌となる物もある。鎌倉時代の物は、地中に湯走りや沸が凝結した状態が見られ、その肌が一見て強靭さを感じさせるが室町時代に降るとそれがやや弱い感じとなる。

 当国物で特に注意を要するのが保昌物で、柾目状の鍛法は時代の判定に難しいものがあり前記の肌の特色をよく会得されたい。

 刃文は直ぐ刃がホツレ、小互の目乱れが交じる、直ぐ刃の場合も決して単調ではなく、二重刃、打ちのけ、喰違い等が見られ、それに湯走りがからみ沸の粒子が大小さまざまに交じり匂いにそれがからみ輝きがある。鋩子は、焼き詰めるもの、掃き掛けるもの、小丸少し乱れ調のもの等で、時代が降ると返りを深く焼き下げるもの等。

 

◎太刀、包 永 (鎌倉期) 

  

  刃長、二尺四寸二分、反り七分、元幅九分、先幅六分八厘、元重二分四厘、先重一分八厘。 鎬造り、行の棟。約四寸位摺り上がる。鎬筋高く鎬幅やや広い平肉豊かに付く。

  地鉄、大板目肌に流れ柾、鎬地も同様、地のうちに不鮮明の沸映り見える。

  刃文、匂いに小沸付く直刃、やや広狭あり、刃中に沸裂け、小乱れ足入り、刃縁に激しく力強い湯走りが入る。地中沸凝りが見られる。

 

○短刀  口高市郡住金吾藤原貞吉(鎌倉期)

  

    刃長、八寸五分強・内賃一兀幅八分八厘・元重三分。

  刀姿、平造り、真の棟。重ね厚い。表力強い素剣、裏喰違い樋、見事な彫刻。

    地鉄、柾目肌、肌にからみ地沸豊かに付く、フクラの辺表裏共柾肌黒く表われる。

    刃文、直ぐ調の刃下部小乱れ足入り刃中金筋入る。上部小沸深く刃縁ホツレ気味湯走り足盛んに入る、フクラの辺より刃特に変化に富み絶妙に働く。

 

◎短刀力王(鎌倉期)

  

  刃長、八寸八分三厘、反りなし、元幅七分七厘、元重二分。

  刀姿、平造り、行の棟。表細い樋、裏護摩箸。

  地鉄、大板目に不規則な流れ柾肌。

  刃文、匂いに小沸が豊かに付く直刃、匂いは深く小沸豊富に付き浅い乱れ状で変化ある。刃中に金筋、稲妻、砂流し等の働き多い。地中央より棟寄りに映り立ち古色豊か。

 

◎刀  南都住金房兵衛尉政次  (室町後期)

  

   刃長、二尺四寸五分三厘、反り六分八厘。

   刀姿、元幅広く重ね厚い重厚な体配、平肉豊か、表裏に棒樋を元で角留め。

   地鉄、杢目に小板目交じり詰む。

   刃文、匂い主調の湾れ、中程に互の目乱れ揃った刃、刃中足、葉激しくところどころ荒沸付き明るく冴える。

   鋩子、鋒は延び、乱れ込み返り浅い。

 

「五段の箪笥と六段の引き出し」とは日本春霞刀剣会の前会長犬塚恒之氏が「これから刀を学ぼうとする人へ」と題して時代別、国別の鑑定 方法を「季刊・春霞刀苑」に初心者の皆様へ分かりやすく解説したものです。

  即ち、五段の箪笥とは古刀期の中心五カ国のことであり、また六段の引き出とは、新刀期の中心六カ国のことです。

この古刀期の中心五カ国と新刀期の中心六カ国の作風(刀姿・地鉄・刃文など)を知ることにより刀の鑑定方法を学ぶものです。

日本春霞刀剣会広島県支部のホームページで連載していますので、お読み頂いて刀の鑑定方法を学んでもらえれば幸いです。


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