週末にオートバイを独りで走らせる。
若いころのようながむしゃらな高揚感はもう薄れてしまったような気がする。
無心で走っていると、未来よりも過去の方が頭をよぎることが多くなった。
年齢を経てもまだオートバイに乗り続けていることのへの軽い嫌悪感を伴った複雑な感情とともに、走りなれたコースを走った。
高度を上げると都心では終わってしまった見頃の桜の花に包まれた。
街道を左にそれて県境へと向かう。このまま走ると上野原という小さな街にでるはずだ。
鉄の塊を股の下に挟んで昔ほど派手にコーナーに突っ込むこともなくなった。何を守ろうとしているのだろうか。
金属がむき出しのカタナと無機質な工場はよく似合う。
自分の送る無機質な日々としっくりとくる。
上野原市は人口が3万人に満たない小さな街である。ちょっと調べると1990年代に3万を超したのピークに減少しているようだ。
都会で日々、全力で働いている。
ここはそんな都会からわずかに2時間程度の距離にある。
このような寂しい風景の地方都市に最近なぜか惹かれる自分がいる。
古い商家が取り壊されてゆく。
ただ、発展のないこの街にどんな新しいものを建築しようというのだろう。
残すことの価値は置き去りにされがちだ。
中央高速に乗り一気に自宅のある東京下町へ。
渋滞もなくストレスフリーで帰宅。
駐車場にオートバイを停めてエンジンを切った瞬間、忘れていた高揚感が訪れるのを感じた。
また乗ろう。