「友がみな我よりえらく見える日は」 | オートバイ乗りの書斎

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「友がみな我よりえらく見える日は」 上原 隆著 幻冬舎アウトロー文庫

泣くかもしれない。でも、静に力が湧いてくる」と書かれていた店員さんの手書きのポップに心を動かされて衝動買いした本書。

 14の短い短編。全てがノンフィクション。「ホームレス」、「離婚」、「リストラ」、「登校拒否」、「うつ病」、目次に並ぶ人生の敗北を意味する作品名。全ての物語(実話)にはハッピーエンドは、ない。敗北感に生きる現実の人生を、脚色せずに語る。でも確かに、“静かに力が湧いてくる”。なぜだろう。

自分より不幸な人間の物語が相対的に自分の今を幸福にしてくれる? がく然として自己嫌悪。いや、自己嫌悪と告白することすら偽善なのかもしれない。だが、幸福の実感は多くの場合、相対的だ。

「容姿」という名の作品に登場する46歳の女性との会話の冒頭。「こんなふうに男の人と二人で会話するの15年ぶり、緊張しています」。彼女は18歳の時に母親からこう言われた。「あんた、お金出してあげるから、南雲さんへいく?」と。南雲さんとは、近所にあった有名な美容整形外科である。彼女は46年の人生で一度も異性と交際した経験がない。

 背負うには過酷過ぎると言える何かを抱え込んで生きている人たちの物語が、かえって地に足をつけた生活の営みを持っているように感じるのは俺だけか?読みながら力が湧いてきたら?素直に受入れよう。普通の“ノンフィクション”の持つ偉大な力だ。