優樹さんの可愛さは人を殺すか
◇ダブルブリッド
<あらすじ>
特異遺伝因子保持生物――通称『怪(あやかし)』の血を受け継ぐ少女、片倉優樹はその力と銀髪から『白髪頭』と呼ばれ怖れられていた。
ある日、特殊部隊『EAT』へ協力中、優樹は人間の青年と出会う。
名前は山崎太一郎。彼は――後悔しない男。
<感想>
実は、初めて読了した小説がこれでした。
でも驚きました。いきなり右の肺がないっていう文章が視界に飛び込んだ時は。
加えて、主人公の優樹さんが目玉を抉られたり。
そんな優樹さんは、平和を好み勤務中に飲酒する素敵なお姉さん。
捜査六課(優樹さんの職場)に出向した山崎太一郎は、後悔しない男。退屈で死にそうになったり、優樹さんに稽古で惨敗したり、説教されたり。六課でおいしい経験(優樹さんに腹を殴られる、とか)を積みながら、次第に彼女の優しさを知ります。
後半。エゴの塊みたいな研究者、横田は優樹さんのことを『人類の貴重な資源』と評価します。
それに激昂する太一郎。彼は優樹さんを『怪』ではなく『人間』だと叫ぶ。
山崎太一郎が、優樹さんへの認識を超越した瞬間。あるいは認識を砕いた瞬間。
だが追い込まれた優樹さんは、太一郎を守るために変貌する(外見が)。
人間ではない。太一郎の視認した現実は、彼の認識を蘇生させる。優樹さんを目前に、太一郎は完全な恐怖を示してしまう。
優樹さんにとって、それは信頼と友情が死ぬ瞬間だ。
優樹さんは、もう太一郎は六課に来ないと思ってしまうわけです。あれだけ恐怖を刻んでしまったから。
しかし太一郎は逃げません。
刻まれた恐怖がある。それでも彼女を尊敬している。片倉優樹という、存在を。
優樹さんが太一郎に刻んだのは恐怖だけではないのです。それを塗り潰すほどの優しさが、在る。
信頼と友情は、生きていた。死んでいなかった。
絶対に裏切らないと誓う太一郎。人間なんか、と諦めていた優樹さんは、希望を見たのです。
自分を受け入れてくれる存在。幻想だと思っていた。ずっと待っていた。
――待ち人は、ここにいた。
ですが最後の――嬉しさで泣いた優樹さんの頭髪を撫でる太一郎は、正直殴ってやりたいです。
撫でたいよ俺が! 畜生!
ところで優樹さんに大怪我を負わせた人物について一切触れていませんでしたが、彼も優樹さんの強さを際立てる重要な存在です。
無視した理由は、優樹さんの肉片を食べたから。
食べたいよ俺が! 畜生!

