秋の日帰りお天気旅行(3) | 片平敦オフィシャルブログ「気象予報士・片平敦の 風まかせお天気日記。」Powered by Ameba

秋の日帰りお天気旅行(3)

研究所を出て、敷地内を歩くこと3分ほど。

高層気象台と気象測器検定センターの庁舎に着きます。
気象予報士・片平敦の 風まかせお天気日記。


まずは気象測器検定センター(通称:測器センター)を

見学させていただきましたが…。すごかった!!

オタクにはたまらないものばかり、でした。


全国のお天気オタクのみなさま、オススメです。


気象予報士・片平敦の 風まかせお天気日記。
かつて高層気象台の書庫として使われていたこちらの建物。

1926年の建築だそうですが、現在は

気象測器参考館」として利用されています。


「気象測器」とは気温計とか気圧計とか、

お天気にかかわるいろんなものを測定する器械のこと。


日本で気象観測が始まった120年以上前からの測器の歴史が、

こちらの参考館では余すところなく学ぶことができます。

全国の気象台・測候所で使われなくなり、

倉庫にしまわれていた古い気象測器を集めて、展示しているんですって。


気象予報士・片平敦の 風まかせお天気日記。

【スプルング式自記気圧計】

 水銀柱を利用する気圧計で測った気圧を

天秤を使って「重さ」に変換して、それを自動で記録する器械です。

大きな本棚と同じくらいの大きさですが、

自記してくれる気圧計として画期的なものでした。

 この実物は、あまり残っていないんだそうでとても貴重なものです。


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【カンベル日照計】

 これはけっこうあちこちで見かけます。

水晶玉が虫めがねの役割をして、

太陽が照っている時間は下の紙が焦げるという仕組み。

焦げた部分を読み取って、日照時間を測ります。


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【雲鏡(うんきょう)】

 これは本当にめずらしい測器。

雲を鏡に映して、見掛け上の速度や高さを測定する器械です。

こんな気象測器があったこと自体、知りませんでした。


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【視程計】

 これは世界に何個も残っていない貴重な測器だそうです。

すりガラスのような半透明のガラスを何枚も入れて、

それをのぞいてどこまで見えるかを測定するそうなんです。

 「目の検査」みたいな感じでおもしろかったです。


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【高層気象の測器】

 気球につけて空高くに飛ばす「ゾンデ」という測器。

桐の箱で作られたものがあったり、

ろうそくに火をつけて目印にする提灯ゾンデがあったり、

材質も金属だったり段ボールだったり…。


ゾンデひとつ取っても、

大勢の人の工夫と改善の結果として今の形があるんですね。


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【ロビンソン風速計】

 明治初期ごろの風速計です。

これが改善されて…↓


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【3杯型風速計】

 感度も良く、追従性も良い新しい風速計になりました。

おわんが一つ減っただけで、だいぶ性能が良くなったんですって。


気象予報士・片平敦の 風まかせお天気日記。

【風向板】

 これもおもしろかった!

 なにをするかというと、気象台の天井についていたものなんですって。


 気象台の屋上についている風向計(風見鶏みたいなの)の軸を、

ず~っと建物の中に伸ばして、そこに針をつけるんだそうです。

 天井で針が動くと、外で今ふいている風向と同じで、

室内で「あ、今は北北東の風だ」とか分かる、というものなんです。


 昔の気象台にはみんなコレがついていたんですって。


 晴れ   晴れ   晴れ   晴れ 


そして、いちばん興味深かったのは、こちら↓
気象予報士・片平敦の 風まかせお天気日記。

古い「時計(クロノメーター)」が展示されていたこと。


なんで??!


気象観測をする際にいちばん大事なことって、

そういえば、よくよく考えれば、正確に正しく時刻が分かること、なんです。

時計がめちゃめちゃだったら、どんなに正確に気温を測ったって、

何時何分かわからなければ、その価値が半減してしまいます。


しかも、どんな高温にも低温にも耐えられる、

過酷な環境でもしっかりと正確に時を刻む時計が必要なんですね。


説明してくださった調査官さんの話によれば、

1920年代当時、日本にはそんな正確な時計を作れる技術はなかったそうで、

気象台の職員(後年・時計学会副会長に)が官費でスイスに留学して、

世界でも最新の時計技術を身につけてきたんだそうです。


また、気象測器も日本にはまだ上手に作れる民間の会社はなく、

気象台の職員が手探りで、いろんな測器を作ったんだそうです。


今まで見学したいろんな気象台よりもどこよりも、

「工場(こうば)」「職人」の空気を感じた見学になりました。


気象台の世界でも、やっぱり日本は「ものづくり」の国、だったのでした。



(つづく…)