台風一過 | 片平敦オフィシャルブログ「気象予報士・片平敦の 風まかせお天気日記。」Powered by Ameba

台風一過

台風が過ぎ去った大阪。

きのうの午後には青空ものぞいて「台風一過」でした。
気象予報士・片平敦の 風まかせお天気日記。

台風の接近が深夜だったこともあって「寝ずの番」だったのですが、

朝10時ごろ、いったん家に帰るときの青空は目にしみました。


当初の予想より少しだけ東にブレて直撃コースは避けられましたが、

和歌山県中心に近畿でも各地で被害が出てしまいました。

きのう午前2時ごろ、

暴風域に入っている大阪市北区の関テレ前のようすです。
真っ暗で見にくいですが、木々が大きく揺れて、

風の音がうなっているようすがわかります。


台風の西側(風がどちらかといえば弱いほう)でさえ

この暴風ですから、紀伊水道を北上してきていたら…と思うとゾッとします。


気象予報士・片平敦の 風まかせお天気日記。

気象予報士・片平敦の 風まかせお天気日記。
朝、帰り道で見た大阪市内のようす。

自転車がまとめて倒れていたり、

太めの木の枝が折れて落ちていたり、

台風の爪痕があちこちにありました。


 *     *     *     *


以前も書きましたが、台風情報は基本的に、

気象台の発表する情報の中で解説するという「しばり」があります。


逆にいうと、豊富な情報・役に立つ情報を提供してくれなければ、

解説する側はかなり厳しい(解説しづらい)こともあるのですが、

今回、解説者として「気象台って頼りになる!」と感じることがありました。


気象予報士・片平敦の 風まかせお天気日記。

台風が接近し影響が出ると予想されるときに、

関係機関(自治体・警察・消防・自衛隊・ライフライン・報道など)向けに

今後の見通しなどの説明として開催されるのが「台風説明会」。


気象台で変わることなく50年以上も前からその都度開催されている、

(「台風説明会」という名称も、たぶん、50年前から変わっていない)

防災機関が一堂に会して台風対応を取り始めるキッカケになる、

とてもとても大事な説明会なんです。


実は、僕が大阪に来てからもうかれこれ5年になりますが、

この間、近畿に上陸した台風は1つもなく、

この「台風説明会」に参加したことはありませんでした。


放送の準備で忙しいキャスターさんも多いと思いますが、

この説明会、時間を作ってでも参加する価値がある会でした。


気象予報士・片平敦の 風まかせお天気日記。

一般向けではなく防災担当者向けの説明会であるだけに、

上手に使わないと少し危ない情報もあります。

(予報円の中心を進むと、

 暴風警報はいつごろ発表される予定か、

 大阪府の暴風域に入る時間はいつごろが予想されるか、などなど)


こういった情報は一般にそのまま提供して一人歩きすると良くないですが、

一方で、僕ら専門家にとっては非常に役に立つ情報なんです。


また、先ほどから書いているように「しばり」があるなかで、

こうしたオフィシャルな場で質問をし回答をいただければ、

その情報も放送などで使用することができるわけです。


僕が質問して役に立った、と思ったのは、

最大瞬間風速は、近畿ではどの程度まで吹きうるのか」の予想数値でした。

被害に直接的に結びつくのは「平均風速」ではなく「瞬間風速」=突風なんです。


「突風率」といって、平均風速より1.5~2倍くらいの瞬間風速がありうるのですが、

気象庁の情報の中に、今回の台風についての「予想される最大瞬間風速」がないと、

なかなか放送では言いにくいわけです(「しばり」があるから。一般論としていうのはアリですが)


そこで、こうした説明会の場で「○○メートル程度もあり得ます」とお返事をいただけることは、

僕ら解説者にとっては本当にありがたい。

「しばり」を気にせず、むしろその瞬間風速の意味や起きうる被害の解説に専念できます。


そんなわけで、担当者向け「台風説明会」の有用さを感じ入った次第でした。


  *     *     *     *


今回の記事では、台風18号の際の僕ら予報・解説現場の話を書きました。

ちょっとマニアックな話になってたらゴメンナサイ。


気象台と僕ら気象キャスターはそれぞれ役割分担して、

「災害から市民の皆さんを守る」ために連携して頑張っているんだ、

ということを知ってもらいたくて、こんな記事にしてみました晴れ