若い人を見ると、私はいつも思う。

若いって事は宝物を持っているのと同じ事なんだと。

 

若い力を使わないと宝の持ち腐れになってしまう。

 

身体も自由に動くし理解力と頭の回転も早い。柔軟性もあるしやる気があれば、何でも出来ると思う。


何かに挑戦しないなんて、もったいない。

 

私の若い時、年配の人に『あなたは若くていいね』としみじみ言われた。

 

私は『若いのだけが、とりえです。』といつも微笑んで答えていた。

 

しかし思い返すと、その若い時は何も出来ないうちに、アッと言う間に過ぎてしまった。

 

 

そして、自分が年配になった今、昔、私が言われたように若い人に言ってしまう。

『若いっていいね。若いんだから何でもやってみなさい。

失敗したって、失敗は成功のもとなんだから。』


言われた方にとっては、余計なお世話かも知れない。

 

 

しかしそんな私も、精神年齢だけは若返る時が多々ある。

まだまだ行けるぞと思うのだ。

 

けれど、身体がついていかない。

小さい文字は読むのに、いちいちメガネが必要だ。

少し走ると息がハァハァ、心臓はバクバクして立ち止まる。

ちょっと動けば、筋肉痛と腰痛だ。重いものを持てなくなったし握力もなくなった。


筋肉の量が減ってしまった。

 

 

人の名前は一回聞いただけでは覚えられない。ちょっと前に聞いたのに

『えっと名前は何でしたっけ』と言ってしまう。失礼きわまりない困った私だ。

 

最近何かを取りに行けば、アレ?何を取りに来たんだろうと思う事しばしばだ。

 

私の身体はあちこちのメンテナンスが必要なようだ。

 

何種類ものサプリメントも買ってある。それもありすぎて、飲むのを忘れてしまう。

飲んだところで、私の細胞が20代に甦る事はないんだから、まあいいかと思うのだ。

 

 

そんな私がまだまだと思っていても、いつかは必ず来る、最後の時の準備はしておかないと、と思うようになった。

 

子供達が困らないように、断捨離をしてスッキリしておかなければと。


どこに何があるか、何をどうすれば良いか分かりやすくしておこうと思っている。

 

そう思いながら、やり始めて、この物を処分しようか、どうしようかと考えてしまい、なかなか進まないのだ。


残しておいても、子供達は絶対使わないと、分かってっているのに、私のもったいないの心が、ふつふつと沸き上がって来てしまう。


そして、ただただ時間が過ぎてしまうのだ。

 

夫は私より若い。まだまだ早いと思って、何も準備をしていなかった。


 私は夫より1つ年上だ。

『金のわらじを履いてでも、探せの人だね』とよく回りの人に言われたものだ。

 

そんな私より若い夫が先に逝ってしまった。


葬儀費用に、もろもろとお金が必要だった。だから夫の葬儀に来てくれた沢山の人達の香典は、とても有りがたかった。

 

だけど、私の時は家族だけの葬儀にしてもらいたい。しかし、それなりの費用は必要だし、子供達に迷惑をかけたくないと思っている。

 

毎日時間の過ぎるのが、すごく早く感じてしまう。

 

だから、私の寿命が尽き果てるのがいつになっても、安心出来るようにそろそろ準備しようかなと思っている。

 

生きているうちにお墓を建てると、長生きが出来ると聞いた事がある。


そんな事は迷信だよと思っても、信じたい気持ちもあるのだ。


だから、何かしら準備をすれば、私の寿命がのびるかもしれない。

だから早めの準備をする事にした。


そして、せっかく生まれて来たんだから、いつか来るその日まで、人生を楽しまなければ。



夫が、新婚旅行の時に言った

『この国を知らずして、他の国はない。まず、日本の国を知る事だ。』の言葉を思い出す。


この国に生まれて来て、本当に良かったと思っている私だ。


私は辰年生まれ。

だから、何となく龍の姿の様に見える、この日本の国の形がとっても好きなのだ。 愛着を感じる。


だから、自然豊かな緑の美しい日本の国が、いつまでも変わってぼしくないと願っている。


そんな変わらない景色を、心豊かになるように、見て歩きたいなと思っているのだ。

 


 

 

 

 

 

 

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