もしも、ピアノが弾けたらいいなっていつも思う。

夫はいつもテレビで街角ピアノの番組を見ていた。

そんな夫の隣で私も一緒に見ていた。

弾いている人の色々な人生の話を聞けるのも楽しいし勉強になる。


そんな人達の、ピアノを弾いている姿をを見ていて、あんなふうに自由に好きな曲が弾けたら、どんなに楽しいだろうと思っている。

 

ある日、次男が頭と指の体操に良いからと電子ピアノを買ってくれた。

これは、次にひく所が赤く光る様になっている。ピアノを習った事がない私には、それもおぼつかない。

 

 

女子孫はピアノを習い初めてから、半年が過ぎた。

 

私「女子孫ちゃん、今日はどんな事を習って来たの?おばあちゃんに、ひいて見せて。」

 

女子孫「いいよ」

 

いつの間にか、何曲も両手で弾ける様になっている。

森のくまさんを 左手で伴奏右手でメロディーを、上手にひいている。

 

私「上手、上手、こんなに上手に弾けるなんて、すごいね。おばあちゃんもピアノ弾けたら いいなって思うよ。」

 

女子孫「おばあちゃん、私が教えてあげる。」と言って私をピアノの前に連れて行った。

 

女子孫「おばあちゃんのひける曲、何かひいて見て」

 

私「片手でしか、弾けないよ。

チューリップの歌を弾いてみるわ。」

 

女子孫「じゃあ左手の伴奏教えるから、こうだよ ひいてみて。」

 

見よう見まねでやってみた。今見た通りだからまあまあ出来る。

 

女子孫「じゃあ今度は両手でやってみて。」

 

両手は難しい。右手に意識が行くと左手が止まる。両手に意識が行くと両手が同じ動きをなる。

 

女子孫「違う、違う」私の手をのけた。

 

女子孫「こうするの やってみて。」

 

私「う~ん どうも指が動かないわ。右手と左手が、同じ動きになっちゃうわ。おばあちゃん、女子孫ちゃんのピアノ弾くの聞いてるわ。」

 

女子孫「おばあちゃん、練習して 練習しないとボケちゃうよ。」

 

私「孫ちゃん先生は、厳しいね。アハハハハ」

 

女子孫「うん、そうだよ。私の先生も厳しいよ。私は家族が大好きだから、おばあちゃんにボケてほしくないの。」

と言いながら、思いでのアルバムをひいた。

 

女子孫の上達に、ビックリさせられた私は、女子孫ちゃんの自信満々の姿に 喜びあふれていた。

 

 

それにしても、私の固くなった脳みそは、この何百倍も練習しないと この様になれないようだ。

 

私がピアニストみたいに、弾くなんて永遠に無い事。

だけど、頭の体操のため、孫ちゃん先生に習って 一曲ぐらい伴奏とメロディーが一緒に弾けるように 練習してみようかなと思った。

 

 

夫は、テレビの街角ピアノを見ながら自分も弾けたらいいなと思っていたのかも知れない。


 

私もいつかピアノを弾けるようになって、街角ピアノでさっそうと弾いている。

 

そんな姿を想像してみる。


これは誰にも言わない。内緒にしておく。


今の私では、笑われるのが、落ちだからだ。

 

私は、そんな事を 頭の中で描いて夢を見ているだけなのだ。

 

 

 

 

 

 

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