リ~ンリ~ン 娘から電話だ。

 

娘「母さん、元気?」

私「うん、元気だよ。」

 

娘「女子ちゃんがね、時々ね 線香の匂いがするって言うんだよ。

家にはロウソクも線香も無いのにね。」

 

私「女子孫ちゃんが?

ほんとに そんな事を言うの?

それっておじいちゃんが、孫達に会いたくて来てるのかもね。どこかで、そんな話を聞いた事があるよ。」

 

娘「え~そうなんだ。

そうかも知れないね。可愛がっていたからね。

二人とも、おじいちゃんとおばあちゃんに会いたいって言ってるから、今度の休みに連れて行くわ。」

 

私「うん、待ってるよ。」と言って電話をきった。

 

 

女子孫は、赤ちゃんの時から何でも匂いを嗅いだ。

匂いに敏感な子で、食べ物を食べる前に、必ず匂いを嗅いだ。

イヤな匂いがすると絶対口に入れない。お腹が空いていても食べないのだ。

不思議な事に、 添加物が入っている様な物で、一般的に体に良くない物と言われている物を避ける。

『体に悪いって分かるんだね、面白い子だね』と笑った事がある。

 

そんな子が、感じたままに線香の匂いがするって言ったと思う。不思議な事があるものだ。

 

 

そして、休日に孫達がやって来た。

孫達は、遺影の前に行って手を合わせた。

女子孫は書いてきた手紙を遺影の前に置いた。

[おじいちゃんへ

いままでありがとうございました。みじかい 人生のあいだだったけど

あそんでもらって、たのしかったよ。〕

 

手紙にはお花と蝶々の絵が書いてある。

そして、おじいちゃんが まて~と言って孫達を追いかけて、孫達がキャーと言って逃げている絵が書かれていた。

 

 

私「お盆も近いし、明日お墓参りに行こうよ。」

 

娘「うん、そのつもりで来たの」

 

 

次の日、娘の車でお墓へ行った。

孫達にとっては、お墓も墓地も 初めて見る景色だ。

 

私「おじいちゃんの骨、ここに入ってるんだよ。」

みんなで手を合わせた。二人は、じっと見つめていた。

孫の手紙にあったように、おじいちゃんと遊んだ事を思い出していたのかもしれない。

 

私「おばあちゃんもね、いつか死んだらここに入るんだよ。」

 

孫達は神妙な顔だ。

 

ここは交通の便も悪く車が無いとなかなか来られない所だ。

 

帰りの車の中で言った。

 

私「二人の孫ちゃん、大きくなったら車の免許とる?免許取ったら、今より もっと年をとったおばあちゃんを、車に乗せてくれる?」

 

孫「うん」

 

私「そしてね、おじいちゃんのお墓参りに連れて来てね。」

 

孫「うん」

 

二人の孫が車を運転する姿を想像すると、嬉しいし頼もしいなと思った。

 

まだまだ先の話なのに、今から楽しみだ。

 

そして、いつか私がお墓に入った後も、来てくれたら もっと嬉しいのだ。

 

 

 

 

 

 

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