もう何年も前から、玄関ドアの鍵の調子が悪かった。

鍵穴に鍵を差し込んで回しても、引っ掛かって回らない事が、時々あった。

 

そんな時は、ドアノブを ちょっと上に持ち上げながら鍵を回すと、すぐ開いた。

 

だから、直そうともせず そのままにしていた。

 

夫が亡くなって、色々な事で出かける事が多くなった。

 

ある日、外出先から帰って来て、いつものように ドアノブを持ち上げながら鍵を回しても びくともしない。

 

(え~大変だ 家の中に入れないわ 

お父さんも死んじゃって、家の中に誰もいないし、外は雨が降ってるし 開かなかったらどうしよう。)

 

私は、焦りながら何回も回しているうちにカシャッっと回った。

 

(ア~良かったーやっと開いた。

すぐ鍵屋さんに行って、直して貰わないと。)

 

私は、近くの鍵屋さんに行って説明した。

ここでは出来ないと言われ、家に戻って違う鍵屋さんに電話をした。

 

 

しばらくして、遠い所から来てくれた。鍵屋さんは、ドアノブごと取り替えないとダメとの事で、取り替える事にした。

 

(あぁこれで安心だ。もっと早く直しておけばよかったわ。

鍵屋さんは救世主だわ。本当に有難い。)

 

鍵屋さんは、鍵の使い方を教えてくれた。

鍵屋さん「ドアの穴に鍵を入れ右に回して戻すと、すぐドアが開きます。鍵を2つおいていきますね」

 

簡単な鍵の使い方まで説明してくれた 親切な鍵屋さんは、帰って行った。

 

 

(この鍵2個じゃ足りないわ。私がいない時、子供達が来て 鍵が無いと困るから、もう1個作らないと。

そうだ、近くの鍵屋さんに合鍵を作って貰おう。)

 

 

私は最初に行った所の ここでは鍵は直せないと言われた鍵屋さんに行った。

 

私「この鍵の合鍵を、作ってほしいんですけど。」

 

鍵屋「はい、すぐ出来ますから 少し待ってて下さい。」

 

私は合鍵が出来るまで、店の中の色んな鍵を見て、珍しい鍵もあるもんだと見ていた。

 

鍵屋「はい、出来ましたよ。80

0円です。」

 

私は家に着くと、この合鍵ちゃんと開くかな?と何となく思った。

 

鍵穴に差してみた。

(あれ、鍵が入っていかない。何で?やっぱり試してよかったわ。)

 

私は又、さっきの鍵屋さんに行かなければならない。

 

(ア~雨降ってるのにめんどくさいな~ でも行かないと やり直して貰わないと。)

と思いながらトボトボと歩いていた。

 

私「あのう、さっき作ってもらった合鍵が使えないんですけど。」

 

鍵屋「どれどれ、ああ形が違うわ。今、作り直すから待ってて下さい」

 

私の心 (ええ~ どうして?どうして形が違うの?コピーの様に作るんじゃないの?

鍵屋さんはプロだと思ってるのに違うのか? 近いからいいけど、遠くから来た人なら怒りたくなると思うよ。)

 


だけど、私はこんな目にあっても怒らない。失敗は成功のもと と教わった世代だ。

私も仕事をしていた時は、失敗があって反省ばかりだったから、人の失敗は大目に見てあげるのだ。

 

 

それにしても、今日は雨の中を行ったり来たり、ありがたかったり、ガッカリしたりした日だった。

 

 

 

 

 

 

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