夫が心配してくれていた、片方の目の手術が終わった。


数日前から喉か痛く咳が出ていた。

しかし、不思議な事に手術中や、病院にいる間は 咳は全く出なかった。

本当に咳が出なくて良かった。



今日から寝る時は、ガーゼを、当てた目の上に保護用のメガネをかけて、寝る事になる。

寝づらいかもしれないけど それよりも手術が無事終わった事で、安心していた。



夜、布団に入って、身動きが出来ない。寝返りなど、絶対してはならないのだ。


新しいレンズを、入れたばかりなのに ずれてしまったら大変な事になってしまう。


こんなに緊張しながら寝るのは、生まれて初めてかも知れない。



次の日の診察で、ガーゼがはずされた。


医師「どうですか? 終わったばかりなので、まだまだ安心は出来ません。目を触らないようにね。」



私「はい、気をつけます。

目の前がスッキリしてます。」


老眼があるので、字を見るときはメガネは必要との事。

しかし今までの もやが、かかった様に見えていたのはなくなった。



昔、 20代の頃、牛乳びんの底の様な、分厚いメガネをかけていた友人がいた。


友人「メガネをはずすと、ボケて何も見えないけど メガネをかけるとばら色の世界が、目の前に広がるんだ。全てがばら色なんだ。すごいよ、人生が変わるよ。

ほら、遠くがハッキリと見える。」



友人はニコニコしながら、 メガネをつけたり取ったリして見せた。



目が良かった私には、いつも見ている普通の景色だ。

綺麗な物も見えるし汚い物も見えている。


それを友人は、ばら色の世界が見えると言った。



その言葉が、今は 何となく分かる気がする。




そして、私が分厚いガーゼをしてメガネをかけて、歩いていた時 近所の人にあった。



近所の人「あら~その目 どうしたの?」


私「白内障の手術したんだよ。」



近所の人「そうなの大変だね、大丈夫なの? 何か困った事があったら、いつでも言ってね。お大事にね。」



私を心配して、言葉をかけてくれる人がいる。

一人暮らしになった私には、とても有り難く、優しさを感じた言葉だった。



それから一週間後、もう片方の 目の手術も無事に終えた。



これで 夫が心配してくれて、私も気にしていた事が解消された。


無事終わったよ 安心したよ。と夫の遺影に報告した。





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