カオルは三人姉妹の長女である。
5歳までは一人っ子で甘えん坊だったのに、妹が生まれてからは急に「お姉ちゃんなんだから」と、母から我慢を強いられることばかりだった。
母は妹達ばかりに構い、カオルには姉としての責任感を求めてきた。
父は、子ども達を可愛がるというよりは、1人の人間として扱うタイプ。
放任主義というか、愛情が薄いと感じ。
カオルに対して理解はあるが、理想主義者で口だけ立派なことを言っているような。
カオルは結婚してから、実家とは距離を置いていた。
会えば、精神疾患のある末っ子の話しかしない両親に、辟易していたからだ。
昨日、父からLINEが来た。
「次女が離婚の危機にある。三女は家を出て彼氏と暮らすようになった。色々話したいことがあるから、家に来ないか?」
カオルはモヤモヤした。
気分が悪くなった。
いつもいつも妹達の話ばかりされて、私のことは二の次三の次。
しかもネガティブな話ばかりで、気分は暗くなるし、HSPのカオルは共感しすぎて、嫌な気持ちをもらってしまうのだ。
私だって精神的に繊細で弱いのに、両親は何一つわかっていない!!
今までは、妹達の話を聞くのも、姉の務めだと思っていたが、なぜ私が自分の気分を悪くしてまで、他人のネガティブエピソードを聞かなくてはいけないのか?!
父は一見、カオルの良き理解者のような立場なので、あまり意見したことなかったのだが、もう我慢したくない!!
「妹達のことは、彼女らのことだから、私には関係ない。ネガティブな話なんて聞きたくない、気分が悪くなる。私は私自身の話がしたい。」
そんな心の底から出てきた言葉を、やっとカオルは父に返信できた。
43歳にして初めて本音を言えた気がする。
どれだけ私は、自分の本音を出すのが苦手だったのだろう。
実の親にでさえ、言いたい事なんて全然言えてない。
ずっと、こんな風にモヤモヤしていたこと、「ま、いっか。いつものことだし、しょうがないよね」と、感情を抑え込んでいた。
長年当たり前に我慢や抑圧や忍耐していると、気付かなくなっているが。
本音で生きたい!と決めてから、少しずつ自分のモヤモヤに気付けるようになってきた。
これからも、モヤモヤや気分の悪さを我慢せず、見逃さず、自分の気持ちを掘り下げて、ちゃんと口に出していきたい。
一歩ずつ、少しづつ、本当の自分を出していくんだ。