「始業式終わったら、就任式があって、それからホームルームなんだけど、ホームルームでする自己紹介考えておいてね。あ、そうそう、式の時は先生たちに紛れて座るか、二階の廊下から見るか、どっちがいい?」

 「……二階で、」

 「了解! 上がった先にパイプ椅子があるから、それに座ってね。居眠りはなるべくしないように」

 
 先生に体育館を見渡せる二階の廊下への行き方を聞いてから、見慣れない廊下を歩き出した。わいわいと聞こえる生徒たちの声に、耳が痛くなる。年齢が近いはずなのに、幼いと感じさせるその声たちに嫌悪感を抱いた。

 のったりとした歩き方で、二階を目指せばそのうち放送がなった。体育館に集まるようにと、先生からの呼びかけだ。その放送に足を早める大勢の人の群れに、捕まるのは真平ごめんだ。

 階段を登ると、一番初めに冷水機が見えた。その横に、藤吉さんと書かれたパイプ椅子。あたかも私が二階に来るのが決められていたかのようだった。

 その椅子を体育館が見える場所まで移動させて、腰を下ろす。ゾロゾロと中にやってくる生徒たちに、ゾッと寒気がしたのは気のせいだろうか。

 何列かに分けて並び、腰を下ろすと壇上に一人の先生が上がっていった。マイクを持って、生徒たちに呼びかける。


 「静かにしてくれないと始められませ〜ん」


 綺麗な先生なのに、体育館中に響く声量に驚いた。ピシッと怯えたように鎮まる生徒たちを見て、怖い先生なのだろうと勝手に思った。


 「これにて、始業式は終わります。気をつけ、礼」


 やっと終わった始業式に続いて、次は就任式。瞼はもう落ちかけていて、首は先ほどからコクコクと揺れている。周りに先生も生徒もいないせいか、気が抜けているのだ。式が始まった辺りから、眠くて仕方ない。まぁここ最近、満足に眠れていないから仕方ないだろう。

 眠気にやられて、意識がはっきりしない中、着任された先生方の紹介が行われた。左から順に、先生たちが並んでいく。


──わたなべ


 ふと耳に入ったその名前に、眠気は飛び去った。食いつくように柵に体を乗り出して、壇上にいる先生を見るが、壇上に上がったのは全く知らない人。


 「渡邉理佐先生は、今年度から養護教諭として着いていただきます」


 フルネームを聞いて、ストンと腰を下ろす。

 当たり前だ。“先生“ と同じ学校になれるわけがない。