「れ、いちゃん、?」

 「……うん、ごめんね、ひとりにして」

 「ほんとだよ、麗奈は、玲ちゃんみたいにひとりを好きになれない、」

 「……寂しがりやだもんね? そんなとこも、好きだった」

 「やだ、ずっと好きでいて、私はずっと」

 「麗奈ちゃんは、他の人を好きになって、他の幸せを見つけて」

 「どうしてそんなこと言うの」

 「私はもういないから、」


 これはきっと神様がくれた最後の世界。私と麗奈ちゃんの二人だけの世界だ。


 「そうだなぁ、たまに、雨が降った時に、私のこと思い出してくれたら、私は嬉しいな。あー、雨を好きだって言ってた変わった人が居たなぁって。

 もう……、泣かないでよ、」

 「っ……、」


 ぼんやりと麗奈ちゃんの姿が霞む。

 その涙を拭ってやりたいのに、手はすり抜けた。


 「わかった、わかったから、見ててね、麗奈ちゃんと幸せになるから、玲ちゃんが教えてくれた世界で、ちゃんと」

 「うん、見てるよ」

 

◇◇◇◇◇


 ハッと目が覚めると涙を流していた。

 まだ薄暗い部屋の中で聞こえたのは、雨の音。外を覗けば、雨が降っていて、けれど視界の先に虹がかかっていた。

 それはまるで玲ちゃんが応援してくれているようだった。

 めげていてはダメだ。自分に喝を入れて、仕事の支度を始める。

 彼女と約束したから、私は頑張る。見ててね、玲ちゃん。

 

【完】