「由依さん! どうですか?」
従姉妹が遊びにきた。
まだ中学生の従姉妹は「由依さん由依さん」って可愛らしくて、その無邪気さをいつまでも忘れないでほしいと思う。
「どれどれ?」
私のメイクポーチを眺めたのちに、メイクをしてみたいと言ったひかるに、許可を出した。
すると、雑誌で読んだ知識を披露してくれるとのことで、ひかるのメイク技術をお手並み拝見させてもらう。
「ふふっ うまいじゃん」
「ほんとですか?」
「うんうん、後ちょっとだけ、アイライン上手くなれば完璧」
ドヤ〜っと変な効果音を口にしながら、ご機嫌なひかるは可愛らしい。
頭を撫でてやれば、これまた満足気に口角を上げた。
「これで少し大人に近づけましたかね」
「う〜ん、まだまだかなぁ」
「えー、早く大人になりたいんです」
「ひかるはそのままでいいよ」
「……」
不貞腐れたように、頬を膨らませたひかるは、その膨らんだ頬を紅潮させながら、小さく小さく言った。
「…だって、由依さん、大人な人が好きって、」
「ふふっ そうだね〜大人な人が好き」
「…頑張ります」
「頑張ってね」
この子が、どんな大人になったとしても、きっと可愛がってる思うのだけれど、どうしてこうもこだわるのだろうか。
可愛いからいいけど。
ひかるが由依さんに告白して困らせるのは
五年後のことだった。
【完】