ナザレ(4)
聖ヨセフ教会
受胎告知教会の隣の修道院を挟んで
聖ヨセフ教会があります。
受胎告知教会と比べてかなり小さく、
とても質素な感じのする教会です。
↑各教会の配置図
左から聖ヨセフ教会、修道院、受胎告知教会
聖ヨセフ教会はマリヤの夫ヨセフの
住居と仕事場があった場所、
後にマリヤとイエスが一緒に住んだ
聖家族の家の跡に建てられた教会です。
ヨセフの家とマリヤの家は近くにあり、
二人はお互い顔見知りだったのですね。
↑聖ヨセフ教会正面
この場所はビザンチン時代に
聖家族の家と特定されて礼拝所となり、
12世紀の十字軍時代に
新たに教会が建てられました。
1263年にアラブによって破壊されましたが、
1745年にフランシスコ会によって取得され、
1754年に最初の礼拝堂が建てられ、
1914年に現在の教会が再建されました。
聖ヨセフ教会の横にある入口の壁には、
小窓に聖家族の像が置かれています。
↑聖ヨセフ教会の側面
小さな入口の横に聖家族の像がある
↑聖家族像
教会横の入口から教会内に入ると
すぐに礼拝堂となっています。
特別な装飾などない普通の礼拝堂ですが、
正面にある祭壇の背後の壁の上部には
聖家族の絵が描かれています。
↑聖ヨセフ教会礼拝堂
派手さはなく落ち着いた感じになっている
↑祭壇背後の壁上部の聖家族の絵
仲の良さそうな家族に見える
一階の礼拝堂から地下に下る階段を下りると、
ビザンチン時代の礼拝堂があり、
祭壇が置かれています。
↑地下のビザンチン時代の礼拝堂
祭壇斜め前の四角い枠は下の写真
↑中を覗き込むと更に地下に
ヨセフたちが住んだ住居跡が見られる
旅行者たちが投げ込んだお金も
ここにも聖家族の絵が飾られています。
少年イエスが大工仕事を手伝っていて、
その両側にはヨセフとマリヤがいて、
イエスの作業を見守っている絵です。
↑大工仕事を手伝う少年イエスの絵
十字架を作っているようにも見える
ヨセフの職業が大工であったということは、
ナザレの人々がイエスについて、
「この人は大工の息子ではありませんか」
(マタイ13:55)と言ったことから分かります。
またマルコ6:3ではイエスについて、
「この人は大工ではありませんか」とあり、
イエスも大工をしていたことが分かります。
ヨセフは自分の長男であるイエスに
大工の仕事を教えたのでしょう。
イエスは30歳で公生涯に入るまで、
ここで大工の仕事をしていたのです。
当時の大工は木材や石材で家屋だけでなく、
家具や農具を作っていたと考えられています。
↑ヨセフに抱かれる幼子イエス
母子画はよく見るが父子画は珍しい
地下にはヨセフの住居と仕事場だった
洞窟の遺構が残っています。
アリの巣のような洞窟住居に
聖家族は暮らしていたのです。
↑聖ヨセフ教会の構造
1階は現在建っている教会
地下はビザンチン時代の礼拝堂跡
更にその下がヨセフの住居跡
↑地下の洞窟住居の見取り図
手前の階段から洞窟内に入っていく
↑ビザンチン時代の洗礼槽
床にはモザイクとなっている
ヨセフは婚約者マリヤの妊娠を知って、
どんなにか驚き苦悶したことでしょう。
当時、婚約中に妊娠することは、
不貞の罪を犯したとみなされ、
最悪の場合は死刑にもなることでした。
聖書には次のように書かれています。
「夫のヨセフは正しい人であって、
彼女をさらし者にはしたくなかったので、
内密にさらせようと決めた。」(マタイ1:19)
ヨセフは忠実に律法を守る人でしたが、
婚約を破棄して彼女を去らせようとしました。
それはマリヤを嫌いになったからではなく、
婚約関係がなければ不貞罪に問われず、
マリヤの命は助けられたからです。
マリヤのことで一人悩んでいたヨセフに
主の使いが夢に現れてヨセフに語りました。
「恐れないであなたの妻マリヤを迎えなさい。
その胎に宿っているものは
聖霊によるのです。」
(マタイ1:20)
↑地下の礼拝堂にあるステンドグラス
夢で御使いの御告げを受けるヨセフ
ヨセフは目覚めると夢で命じられた通りに、
マリヤを妻として迎え入れました。
それは簡単な決断ではありませんでした。
マリヤのことで人々から陰口を言われ、
仲間外れにされるかもしれないのです。
マリヤとの結婚には困難が予想されました。
それでもヨセフは御告げに従ったのです。
↑地下の礼拝堂にあるステンドグラス
ヨセフとマリヤの結婚
誓いの指輪を交換している
しかし当時は指輪の交換はなかった
この後、ヨセフは住民登録をするために、
マリヤと共にベツレヘムへと旅をしました。
決して楽な旅ではなく危険もあったでしょう。
ヨセフは身重のマリヤを守り支えました。
ベツレヘムに着くとヨセフはマリヤのために
休める場所を必死で探し回りました。
またマリヤの出産も助けたことでしょう。
↑ナザレからベツレヘムへの旅
ヘロデ王がキリストを殺すために、
ベツレヘムに軍隊を送り込んだ時、
ヨセフはマリヤと幼子イエスを連れて
エジプトへと逃れていきました。
その旅も困難なことだったでしょう。
ヘロデが死んで危険が去ったことを知ると、
ヨセフはマリヤとイエスを連れて
再びナザレへと帰っていきました。
↑幼子のイエスを連れてエジプトへ避難
その後、エジプトからナザレに帰った
こうしてヨセフはマリヤとイエスを守り通し、
夫として父としの役割を果たしました。
またダビデの子孫であるヨセフが
マリヤと結婚することによって、
イエスもダビデの子孫として生まれました。
それによってキリストはダビデの子孫として
生まれるという旧約の預言も成就しました。
ヨセフはマリヤに比べ影が薄い感じです。
ヨセフはごく普通の無名の大工でした。
しかしヨセフは神の国の計画において、
重要な役割を果たしたのです。
↑地下の礼拝堂にあるステンドグラス
ヨセフの臨終 イエスとマリヤによる看取り
イエスの公生涯にヨセフは登場しません。
このことからヨセフはイエスの公生涯前に
既に世を去っていたと考えられています。
(つづく)
シャローム!!
パスター
春日部グレイスチャーチ