Aさんとそういう仲になって一ヶ月程経ったある日、仕事中に急に電話がかかってきました。

その時私たちは週に二回くらい会っていましたが、LINEでのやりとりばかりで、電話はほとんどしていませんでした。
何かあったのかな?と心配になり、休憩中に折り返しました。



「どうかした?」

「…ちょっとお願いがあるんやけど」

「うん、何?」


「お金貸してくれん?」


驚くよりも先に、
「何万くらい?」と、返していました。


「七万くらい」

「いつまでにいるの?」

「明後日まで」

「五万なら手持ちがあるけど、
今日明日事務所で缶詰めやから引きに行く間がないんよね」

「五万でもいいよ、何とかなる


淡々とやりとりしていましたが、
内心では諭吉とAさんの顔が頭の中でぐるぐるしていました。

その日の夕方、私の所属する支所の事務所まで、お金を取りにきてくれました。
車で一時間ほどかかる、私の地元までの道のりを、Aさんの方が来てくれたのは後にも先にもその一回きりでした。



一週間後に、もう三万貸してほしいと言われ、
さすがに
「何で?何に必要なん?」と問い詰めました。
すると、

「銀行のカードローンの返済期日が過ぎてしまった」
「150万程借りている」
「車の事故の分で人に借りている分も200万くらいある」

と白状しました。


Aさんは前年、通勤中に、4台玉突きの大事故を起こしていました。

毎月の保険料を支払えない、ということで任意保険に加入しておらず、全額自腹で修理代を払わなければなりませんでした。

銀行のカードローンでも既に借りていたのと、(若い頃の風俗通いとパチンコが原因と本人は言っていました)
その他の理由でローン審査に通らなかったので、親類と消費者金融から借金をしているそうです。



私は、実はそのことを既に知っていました。

さすがに内訳までは知りませんでしたが、Aさんに借金があることは知っていました。

Aさんの友人のNさん、私の上司のYさんが、私とAさんの関係が深くなるのを止めようとしていたのは、
Aさんが、完全に自業自得の多額の借金を抱えていながら、
真剣に給料をその返済に充てようとはせず、
その場その場で様々な人に借りたお金を借金の返済に充て、芋づる式に増えた借金を順番に踏み倒し、
そんな状況でもパチンコに熱中するような人だったからです。


「あいつに金は貸すなよ」
「絶っ対に!返ってこんからな」
と、NさんとYさんの二人に念押しされていました。
彼氏にお金を貸した、という友人の話を聞いた時、「馬鹿じゃない⁉」とも言いました。
それでも貸してしまいました。
断ると離れていってしまいそうな気がしたので。
今思うと完全に私は幼稚で、無知で、世間知らずでした。

Aさんは私に月に5,000円ずつ返してくれることになりました。
早速、翌月の返済を踏み倒しました。