あの日々からゆっくりと日常に戻る。
そういう感情だろうか。いま抱いているこの気持ちは。
「留学楽しかった~?」
といつも通りの友達から笑って聞かれる。
電車には一目で私と同じ類の人間だとわかる人しかいない。
言葉だって親しみすぎて、アメリカで聞いたそれとは明らかに違うことばしか聞かない。
飲み放題、何かあれば居酒屋へ行く。
そうやっぱりあれは、自分が経験した10ヶ月のあれは非日常だったのだ。
はじめてセントルイスに降り立った日の不安や期待もそこを出るときにはもうなかった。それは非日常が明らかに日常に変わっていたのであろう。だからそこを出る日にまたすぐ帰ってくるような気が自然としていた。でもアパートも解約した。全ての荷物も詰めた。
そう。ここにいつ戻ってくるかはわからないのだ。
ここでできた友達にもいつ会えるかもわからない。そう思った。セントルイスを発つ二日前はじめてそう思った。
泣かないだろうなと思っていた。けど一度だけ泣いた。それも友達の前ではなく、先生の前で。
どうしても涙が止まらなかった。それがなんでなのかは私もわからない。
全てを包みこんでくれるような笑顔のおかげだろうか。それとも留学生が学部の授業を受ける辛さや難しさをわかってくれていた人だったからだろうか。
そんな日常がまた非日常だと思える日々にいま戻った。帰国してもうすぐ一ヶ月。ゆっくりとどこか遠くにあった時計を見つけてまた針が動き出したように。
この前アナザースカイを見た。小説家の湊かなえさんが出ていた回だ。青年海外協力隊という言葉が出てきてその回を喰いるように見た。
「これを人生のビッグイベントにしたくない」
すごいことを言う人だなと直感で感じた。間違いなく湊かなえさんの歴史を語る上で重要な2年であっただろうと思う。それでもそれはビッグイベントにしたくない。
では自分の留学は?
そう思った時に未来へのエネルギーが湧いてきた。
自分はまだ何一つやり遂げてない。そう思えることだけが自分の希望だと感じた。
Keisuke